それからどうするPart26

それからどうするPart27

それからどうするPart28

それからどうするPart29

それからどうするPart30

それからどうするPart31

Part17-25
「私はセンセイ、いや桐野健司といいます」
「以前は高校の教師をしていました」
「正直に言いますと、私は思春期を迎える頃から
女性の裸に人一倍興味があり、盗撮がばれて学校を
辞めました」 「それからも仕事に就かずふらふらして
いるうち金を使い果たしてしまいホームレスになった
わけです」 「こんな私にも拘りがあり、好みは中年の
女性です・・・いや余計な事を喋りました」
「さて特技といえるかどうか分かりませんが、当時私の
勤めていた高校はかなり荒れており、教師も標的に
なる事がよくありました」
「私は従来気が弱く対抗できずそんな時はずっと
身を縮めていました」
「その体勢をとると不思議な事に生徒の暴力を何かが
跳ね返してくれいつも何事もありませんでした」
「あれは何だったのか今考えても解りません」
「気が付いていないようですね。貴方の能力は貴重です」
「それは防御能力といいます。その力を更に強化
させることです」
「私達はこれから色々と危険な目に合うでしょうから
よろしくね」 とウインクされセンセイはよだれを拭いた。
「おいおい、俺たちと扱いが違うぞ!」
「しかし危険な目って何だ? 俺はそんなの嫌だぜ」
「おい、Aこれからどうするんだ。俺はともかくあいつらは
いい人間だぞ」
「分かっているよ。しかしあんたでもこの世界で何がやりたい事が
あるだろう」
「今のままで結構楽しいよ。然したる不満はない。もうこの歳だ」
「困った人だな。どこにヒマラヤまで行って修行する
年寄がいるんだ」
「例えばこの社会の不平等、崩壊した家族関係、利にばかり走る
資本家、弱者への偏見や無視などが普通に罷り通っている」
「これを自分達の手で治すつもりはないかね」
「無いね、人は業を背負って生まれるんだ。こうなるのは明らかだ」
「どうしてだ。頑固な爺さんだな!」
「あの姉ちゃんなら言う事を聞くかもしんない」
「カーツ、よしお前の世話は彼女に頼もう。それじゃ」
「それじゃって出ていくのか?」
「暫くの間留守にするよ」 しめたヤレヤレだ。
そこに誰かがドアを開ける音がした。  
「内山さんいるかい」 ギャッ大家の婆さんだ。
「なんだ、いるんじゃないか」首を伸ばして無遠慮に部屋の中を観察している。
「あんた前いた人に似ているね。雰囲気が」
「あ!山内さんだ。いい男だったねあの人は」
「あの人は面倒見が良かったよ。いろいろと相談にのって
くれたねー」
一人でべらべら喋り出す婆さんを私は黙って聞いている。
「あのね大変なんだよ。二階の安井さんとこの瑞穂ちゃんがね・・・」
どうやらアパートの住人の子が学校から帰らず親が心配して
いるらしい。
友達の家にも連絡したが分からないらしい。貧乏人の子を誘拐などは
考えられないが、最近は物騒だから何が起こるか分からない。
よし、こんな時はテツのダンボール回収能力を活かそう。
写真を睨んだテツは即座に言った。横町の公園でネコと遊んでるよ」
猫は可愛いが家に連れて帰れずにいたらしい。
「婆さん、いや大家さん猫くらいいいだろう」
「かまやしないよボロアパートだから」
「よしテツ連れてきてあげろ」 これで我々を少しは見直したかな。
「なかなかいい人達だね。でも山内さんはいい男だったよ」
「勝手に言ってろ」
すぐに女の子は見つかった。猫を飼っていいと云うとべそをかいた
顔がにっこり笑った。
「あんた達、見かけによらずいい人じゃないか」
「あれはテツがやったんだ」 
「ところで話によく出てくる山内さんとやらはどんな人だったんだ?」
「熟年離婚してここに転がり込んだ人でね、今はいないのよ」
婆ーさんが岡惚れした人か、まあどうでもいいや。

「さあ今日はこれでお開きにしましょうか」
「チョット、チョット、ワシはどうなるんじゃ」 私は慌てて言った。
「貴方の能力は人を誘導する力とここにいる皆さんの
能力を高める事。そしてそれらを統合して有効に
発揮する事です」
「とうごお〜?」
「この人たちのバラバラな能力を必要に応じて集め
発動することです」
「つまりこの者たちより偉いんだな」
「そうとも言えます」
「一週間が過ぎ、また一同が私の部屋に集合した」
「お前たち何時の間にか顔が引き締まってきたな」
「そうだろう大家の婆さんにも云われたよ」
「さあ今日はとても大切な事をいいますから良く聞いて
くださいね」
「既にゴエモンさんにハッキングしてもらい其々の
個人情報を改ざんしてもらっています。8月から
始まるマイナンバー情報などです」
「これが新しい貴方達です。但し住居を移ってからです」 
「アパートを出るのか? 何処へだ?」
「まあ、それは後程詳しくお知らせします」
「これが俺の名前か、生年月日は同じだな。銀行の口座番号
まで載っているぞ。PSとIDNo.〜‥?これは何だ」
「気になりますか?であればコンビニで一度住民票や
印鑑証明等発行してもらったり、ATMで登録銀行から
お小遣いを引き出してみてください。其の時に要るのが
このカードとPSです」
暇人達ばかりだから何人かがコンビニに行ったらしい。
その間に私は抄子に聞いた。「これで終わりではないだろう」
「ゴエモンさんにそれは頼んであります」
「彼らとは別に架空の振込口座を幾つも作つたからね」
得意そうにゴエモンが言う。
「いよいよそこに金を振り込ませる段取りらしいよ」
「またわしの呪文でか」 「あの手は非常時にしか使えないよ」
「じゃあ、何処からだ。手を後ろに回さずそれが出来るのか?」
「今の俺の手にかかれば造作ないよ。悪道く稼いでいる
所はピックアップしているんだ。そこならいいだろう」
「実は奥の手があってね、一か月後にプログラムが働いて
その口座がゼロになるんだ」 「時限爆弾みたいだな」
「セキュリティプログラムが巡回しているけど見つかったら
バグをあちこちで放ったりして混乱させて逃げ出す方法は
あるが、それでは侵入した事が記録に残るからね。そうしなく
ても無害を装う手が幾らでもあるんだ。まかしといてよ」
「はあ、はあ」
洗浄の終わった金は無事各自の口座に振り込まれた。
「おいテツこの金を何に使いたい?」
「今まで大金とは縁が無かったから思い付かないけどな、
分れた家族に送ってやりたいな。散々迷惑かけたから
俺の金なんか受け取ってくれるかな〜」
「うー、泣かせるなー。そうなったら仕方ないな別の
方法で援助してやれよ」
「センセイ、あんたはどうだい?」
「俺はまたキャバクラに行きたい」 「おらも」 「ワイも」
「はい、そこまてでーす」 抄子ガストップをかける。
「ゴエモンさんの能力は実証されました。 次はですね〜」
不思議な事に抄子が現れてからいつの間にか頭の中から
Aが消えていた。ヤレヤレ、ホッとした。
そんな気分になった途端に大家の婆さんがまたやってきた。
しかも手に何か持っている。こんな場合用心するに限る。
「なんだい、そんな顔をして、差し入れを持って来たんじゃ
ないか」 「それはそれはすいませんな」
「それでね・・」 「そらきた」 「何がそらきただよ」
「四郎さんちの雄平がね・・」 誰だそいつは
「雄平っているだろう。バイクをワンワンいわせるのが・・」
「ぐれて高校に行かない馬鹿だろう」
「それが神田組に連れていかれたらしいんだよ」
「わしはヤクザなんか関わりたくないね」
あーだこーだと押し問答しているのを聞いた抄子が
「じゃあ次は全員で神田組に行きましょう」 
何がじゃあだ。この女は仕切りたがり屋だな。
「教祖、貴方の出番です。統合能力を発揮して下さい」
仕方なく私は雄平を取り戻す段取りを彼らに告げた。
「それでな、まずヘイタイが組事務所に発火する」
「奴らが出てきたところでマンガが地震を誘発させ
組事務所をペシャンコにする」
「当然センセイは我々の周りにバリアをはっておく」
「その混乱に乗じて雄平を取り戻す」
「最後にイケが奴らに組を解散するよう暗示をかける」
事態に齟齬があったのは雄平が中々出てこなかった
からだ。どうやらこの馬鹿はヤクザになりたかったらしい。
ともかく無事にアパートに引き上げた。
「アパートに男ばかり集まっていれば警察や当局に
目をつけられます」
ホームレス経験者は何故か変化を億劫がるが彼らは
大分ポジティブに変わったようだ。
転居の件についても積極的に発言する。
「ばらばらに分かれて住めばいいが、おめえたちとの
腐れ縁は無くしたくないなー」 「俺もだよ」
「だが警察は嫌だな、お上の権威を振りかざすからな」
「でしたら私達の手で適当な住居を用意しています」
「私達ってだれ達だ?」 「難しい事は気にしないで」
「郊外に倒産した会社を買い取ってあるの」
「そこには社員寮があります。そこに行きましょう」
「会社に入れば仕事をするんだろう?廃品処理会社か」
「いえ世間的には太陽光パネルやシートの製造という
体裁をとります。それらしい機械は置いてあります」
「何だ、もう決まってるんじゃないか。でもいいか」
「しかし今更そんな物造ったって商売になるめえ」
「売れなくってもいいのです。但し肝心の時には
仕事をしている振りをしてね」
「それで俺たちに何かいい事があるんね?」
「貴方は社員ですから当然役職名が付きます」
「それでは発表します。会社名はSUNHM.COです」
「ハイカラな名前だな」 
「教祖、貴方が一応社長です」 「一応とは何だ当然だ」
「その他の皆さんは全員部長です」
「わー、俺が部長だってよ〜」 「わしも部長だ」
「馬鹿、従業員が6名部下ゼロだぞ」
「それでもいいや、名刺を作ってくれるんだろう」
しばらくして大家の婆さんが部屋に上がってきた」
「あんた達、何かやったのかい」
「どうしたんですか?」
「最近この界隈を変なのがうろうろしているんだよ」
「どんな人ですかはてな」
「そうねえ、役人みたいな感じかな〜」
来たな、そろそろだとという感が働いていたのだ。
「大家さん、永らくお世話になりましたが、この度
会社の社員寮が完成したのです」
「それで賃貸契約をこの月で切らしていただきます」
「なんだい、あんた達も出てしまうのかい。
何だか寂しいね」
「山内さんも出て行ったし・・」
「またそれかい」
ゴエモンとテツは此のところ自室に籠ってPCに向かい合っている。
某大国の新大統領の資産を調べ上げているのだ。
彼の資産は運営している会社、カジノ、ホテルと様々だが
多くの富裕層が利用している税金の掛からない隠し財産にしている。
ゴエモンは彼のタックスヘイブンで貯蓄、運用する金に
目をつけたのだ。国を再びNo1にするというのが彼の売りだが
そう言う自分は税制の抜け穴を利用して蓄財に励む姿勢は節度も
モラルも皆無の人間である。
「こいつの金なら頂いてもいいだろう」
この二人は善悪でこの行為をしようとしているのでは無さそうだ。
唯、面白いからやっているのだ。多くの国の多くの人がタックス
ヘイブンを利用している。
テツは大統領が何処を利用しているかを深く探っている。
それは各所にあった。バーレーン、ドバイ、ケイマン諸島などに
分散していた。それでもテツには分かるらしく正確にポイントした。
そこには巨大な壁が立ち塞がっていた。ゴエモンには何でもない
光景らしく嬉しそうにそれに挑んだ。セキュリティプログラムが
スッと近づいてくる。ここで逃げ出せば痕跡を残す事になる。
彼は侵入したプログラムのシステム・アーキテクチャの奥底へと
プローブを潜りこませた。
あったぞ! それはメモリープログラムの一部を装っていた。
そこにIDと各種PSが隠されていた。これで何時でも堂々と?
アクセスできる様になった。もうセキュリティプログラムを
気にする必要はない。
それで結果はどうなったのか気になるところである。
翌日の大統領の顔は青かった。口数も極端に少ない。
ボーッとしている。某国の国防省は何かが起こった事を
悟った。金に汚いあいつがこんな顔をするのは・・・・。
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