それからどうするPart17

それからどうするPart18

それからどうするPart19

それからどうするPart20

それからどうするPart21

それからどうするPart22

それからどうするPart24

それからどうするPart25

「人は誰でも過去の影を引きずって歩むものじゃ」
「お前たちは特につらい目にあっただろうからな」
「ん・・まあな」
「だが、お前たちはまだ若い」
「爺さんに比べればな」
「あの太陽が見えるだろう。いつまでもここに留まってはいかん」
「お主たちはあの太陽に向かって歩くのだ」
「さすれば自分の影を踏むことはない」
「どうゆう事?」
「決断じゃ! わし達はここから抜け出るのだ」
「何処へ?」
「すでにその場所は用意してある」
「過去を払拭し新しい生き方に挑戦するのだ、いいな!」
「俺は行く、連れて行ってくれ」 しめしめ乗って来たな・・・
「他の者はどうじゃ? 金の心配ならいらんぞよ」
「俺も行く。いつまでもこんな暮らしはできんからな」
「よーし、よく言った。これからアパートでしばらく暮らすのだ」
「そのアパートは少し古いが3軒借りてる」
そのアパートは何故かAがよく知っていた。
怪しげな宇宙人の言う事をすべて信じたわけではないが、
そのアパートは実在しAが云ったように大家の婆さんがいたのだ。
不思議な事に面倒な手続き無用で契約を済ますことができた。
保証人無用、敷金なしだそうだ。ボロアパートだから難しいことは
言わないらしい。
「うわー広いなこの部屋は」
「畳の部屋か、いいなー」 広いったって6畳だ。
永い間ビニーシートや簡易テントで暮らしていた連中
だからそう思ったのは無理もない。
一室に彼らを集めた後私は訓戒をたれた。
「しばらくは羽をのばすのもいいが、ここに住むにあたって
取り決めを守る必要がある」
「それさえ守れば何をやって過ごしてもいい」
「難しい事を云われたって無理だぞ」
「なーに、大した事ではない。ぼろアパートとはいえ
大家の管理下にあるんだ」
「特にあの婆さんはうるさい」
「なるほど、俺たちをジロジロ観察していたな」
「部屋をいきなり覗きに来るのは大家の特権と
思っているから部屋はきれいに片付けておくこと」
「寝煙草はもちろんいかん」
「こんなアパートしかないのか?」
「そうだ、お前達を入れてくれる所はここしか無かった」
「それと他の住民から嫌われる様な事はしては
いけない。壁が薄いから大きな音をたてるなよ」
「ゴミ出しについてだが、分別は決まり通りにする事」
「隣人との挨拶などはできるだけ上品に」
「こんなとこだな。そうして大家の信頼を得るんだ」
「守らないと追い出されるぞ、注意しろ」
「それからもう一言」
「まだあるのか!」
「近所に銭湯があるから不精せず毎日行け」
「服装はちゃんとしろよ、金を渡しただろう」
やれやれ奴らに教えるのは疲れる。
「おいA、聞いてるんだろう、何とかしろ」
「あんたの言う通り彼らを移動させたぞ」
「だからそろそろあんたの目論見を話したらどうだ」
「それに俺を介してあんたの話を奴らに伝えるのが面倒だ」
「直接話を伝えろって云うのかい」
「そうだ、できるだろ」
「どうしょうかな〜・・・」 こいつは子供か・・・。
「いいだろう、少し待ってくれ」 どうするつもりだ?
ピンポン! 誰か来たようだ。誰かな大家の婆さんか?
ドアを開けて驚いた、めちゃ綺麗な女性が立つていた。
「わたくしAから派遣された菅原抄子ともうします」
ギエッ! Aの奴ワシの考えを先読みしていたな!
まーいいや、綺麗な姉ちゃんだから。
彼女の要望で連中を私の部屋に集合させた。
そして抄子女史が颯爽と姿を現した。
「誰だ、誰だ、すごく綺麗な人だな。わあー俺の好みだ!」
保育園の園児か、猿山の雄ざる達の様な騒ぎだ」
「静まれ、静かに」
「この人はわしの知り合いの菅原抄子さんだ」
「これからお前たちを指導してもらう」
「爺さんよりいいや、本当に別嬪さんだな」
「菅原抄子です。よろしくね」 とニッコリ笑う。
その笑いが多少かたい気がする。
まあこの連中の前だ、仕方なかろう。
「私は皆さんの教導役と言うよりアドバイザーです」
「皆さんと親しくなるために、まず皆さんから自己紹介を
お願いします」
「できればこれまでの職業とか特技なども披露してね」
「では最初はそちらの方からどうぞ」
「ボ、ボク、ボクちゃんは飯田哲夫、通称テツと言います」
「ボクちゃんだってよ・・・あいつ相当のぼせているな」
と仲間が冷やかす。
「ボクちゃんはホームレスの前は営業マンでした」
「特技はダンボール回収、いや地理に詳しいことです」
「どんなところでお宝、いやダンボールがあるか一瞬で
把握できるし、その街に迷う事がありません」
「路上生活に至ったきっかけは博打の借金です」
「金が返せず、そのせいで一家離散、そしてあちこち
放浪し現在に至っています」
「簡潔でわかりやすい紹介でした。すばらしいですわ」
「貴方も、そして他の皆さんもかなり有望な能力を
秘めていらっしゃいます」
「人間の隠された能力は粒子によって発動されるのです」
なにやら難しい話をしているが全然解らない。
みんな話を真面に聞いていない。抄子の顔ばかり見ている。
「テツさんの能力は測位能力でしょう」
「テツさん貴方は頭の中に地図が浮かんで゛きませんか?」
「うん、いやハイ 何枚も浮かんできます」
「それてダンボール等のお宝の場所がすぐに特定できるんです」
「でもそれは誰もそうしているのでは?」
「いえ、それは貴方特有の能力です」
「つまり貴方は衛星などのGPSを頼らずとも、特定の場所を
ポイントできる様になります」
「本当ケエ!、いや本当ですか」
そういえばあいつはいつも一番にお宝を見つけていたな」
「しかしそれが何か他の事に役に立つんかい?」
「おらは、いやもとい自分は通称ヘイタイ、本名は長野兵吾
であります」
「元自衛隊でしたが某国の女スパイに情報をリークして
しまいました」
「結局その事で責任を取らされて辞めることになった
わけであります」
「その後ダンプの運転手、土木工事などをやりましたが続かず、
いつかサラ金に手を出し、首が回らぬようになり止む無く
トンズラし、公園で暮らすようになりました」
「ヘイタイの奴、今日はやけにはりきってるな!声がでかい」
「さてこれは特技に入るかどうかわかりませんが・・・」
「私の屁、いや、おならは特別な物で、仲間からお前の屁は臭い、
強烈だと云われてきました」
「それにそいつには発火力があるようなのです」
「この前も公園でひと騒ぎあったばかりです」
「私がウーンと力むとボンという大きな音がして草むらが
燃え上がったのです」
「近くにいた人たちは皆逃げ出しました」
「またズボンに丸い穴が開いていたから、どうやら私の
あれが原因のようです…以上報告終わり」
「やっぱりあいつのせいだったんだ」 と仲間がざわついた。
「心配いりません。それは貴方がエネルギー発動能力を
秘めているからです」
「これから精進すれば飛躍的に能力を高める事ができます」
「だったらお主、注意しろよアパートを燃やしたら偉い事だぞ」
「それと口から火を噴くように訓練しろ」
「了解しました!」

それからどうするPart23

「わい、いや私は木元満三、通称マンガと呼ばれています」
「前は会社員で職種はコピーライターをやっていました」
「仕事の行き詰まりが原因で鬱病を発症し結局仕事を
辞めました」
「色々と職を替わりましたが、人と馴染めずうろうろしている
うちにあの公園に落ち着いたわけです」
「こんな私でも変わった能力があります」
「それに気が付いたのはつい最近ですが、公園のトイレに
座っていた時、急に地震が起きたのです」
「それからは決まってトイレに行くと揺れがおきるのです」
「仲間にそれを云うとまた笑われそうなので黙っていました」
「あの揺れはやっぱりマンガのせいか」と皆が騒ぐ。
「貴方のチカラは地震誘発力です」
「貴方の力は今後益々大きくなり、大地震なみの力を発動
できるようになります。ですからその力を制御する事を
同時に学んでくださいね」
「ほんまやぞ、マンガ、下手するとこんなぼろアパートなんか
潰れてしまうぞ」
何でまたこの連中はけったいな能力を持っているんだろう。
こんな偶然はありえない。おそらくAの所為に違いない。
私は次々に自己紹介を始める奴らを呆れてみていた。
「私は池本翔太です。皆からはイケと呼ばれています」
「三流大学を出、三流商社にいましたが、どういうわけか
他人に誤解されやすく、辛坊していましたが大きな人間関係の
トラブルを起こし会社を辞めました」
「依頼、人を信用する事が出来ず、フラフラしているうちに
路上生活者になっていました」
「うーん、俺と同じであいつはめちゃいい男だからブスメンや
ブス女には誤解されやすいだろう」
「お前もいい男?ふざけるな。しかし陰湿ないじめがあるからな」
「ホストクラブならすぐに一流になれるぜ」
「ホストは口が達者でないとな。あいつは人がいいから無理だよ」
「でもいい奴だよな、俺達の仲間には勿体ないな」
イケの頼りない存在感が守ってやりたい気になるらしい」
「貴方は心が澄んでいます。余計な力を付加するのはどうかと
思いますが、我々の為にその力を増幅させてください」
「なんか俺たちとは扱いが違うんじゃないか・・」
「いい男だからな」
「ところで人間の潜在能力の一つに読心力があります」
「それを貴方は大幅に発達させる事ができるようになります」
「それに少しだけ誘導能力も芽生えつつあります」
「あなたの能力はもう分かっています」
「ちょっと、ちょっと、ワテ、いやわしにも云わせてよ・・」
「えへん、私は石川兆治、皆にはゴエモンと呼ばれています」
「ゴエモンと呼ばれても悪い事はチョコッとしかやっていません」
「高校は電子専門学校に入り、そこでサイバーセキュリティに
ついて学び、私自身も将来サイバーセキュリティに関する
仕事を目指していました」
「ある時ディスプレイのマシン語をじっと見ていると、どうした訳か
ある部分が何を意味するものかが解ってきたのです」
マシン語を見てそのパターン等から意味を理解する事はほとんど
出来るものではありません。しかし私は解読できたのです。
本当に不思議でした」
仕事についた私は能力を悪用して情報を見たり改ざんしたことがばれ
会社を追い出され、その後色々ありましたが何時の間にか路上生活者
になっていました」
「そう、貴方は機械語に同化でき、どの様なプログラムにも対応する
能力があります。その能力を更に伸ばせば飛び回っている電気信号
に何時でも貴方のプローブを侵入させる事が出来る様になります」
Part9-16
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