第九章  限界村と若者



どうもAは海が気に入ったようだ。日本に帰ってからも海の話を繰り返しする。

「 フィリピンの海も良かったが、ソマリアの海は素晴らしかった。生命に満ち溢れている。

また行ってみたい」

「 余程気に入ったんだな。そのうち機会をつくるよ」

今後の私の方針をすこし整理してみよう。今の活動に加え過疎化した村と迷える若者たちの

救済を次の目標においている。

私は過疎化した村の買収、あるいは租借のために時間をかけて情報を収集していた。

地方をまわり候補地を絞った。そこは中国山地の過疎化した集落だった。

電車も廃線になりスーパーも病院も撤退している。若者は去り年寄だけの集落だ。

そんなところにゼンとシズオを連れて訪れた。

「 こんなところは大した物はできんが、自給自足じゃよ」

「 そうですか。町が遠くてお困りでしょう。私共はここに治療院を開こうと考えております。

つきましては現在ご使用でない土地をお借りしたいと思いまして」

「 くそ真面目そうなゼンは妙な説得力があり、あっさり了解を得た」

程無く寒村の外れに立派な治療院が出来上がった。ナース姿のシズオが現れると

やってきた年寄はあっけにとられている。

そこからはワタシの出番である。

症状を聞き、生活の悩み事まで丁寧に聞いてあげた。その間に治療は終わっていた。

足をひいていた人も腰を曲げた人もビンビンになっていまにも踊りだしそうである。

走って駆け回るお年寄りもいる。治療院は思惑どおり村の集会所のようになった。

「 若い者を呼び込み活気ある村にしたい」 という話を少しずつ披露していくと

全員が賛同してくれた。

次に現時点でお年寄の困っている事を聞いてみた。

山深い所だから街に出るまでかなり時間がかかる。しかも曲がりくねった一本道。

バスは一日二本という超過疎地で、もちろん学校も保育園もなし。

病気になれば一日かけて町の病院に行っていたそうだ。

「 云ってはなんだが、こんな所には若いもんは来んだろう。来ても仕事もないしな」

「 おっしゃるとおりです。仕事をみつけると並行して交通の便を良くしましょう」

私は町に最短距離で行ける地図上のデータからトンネル工事を始めるには

どうしたらよいか考えた。

「 これは大変だ。大規模な工事になるな、時間もかかりそうだ」 と私はぼやいた。

「 A・・・なんとかならないか?」 ワタシがAに訊ねた。

「 君たちの考えている事はだいたい掴めている。まかせてくれるかい」

「 もちろんだ。あなたがたよりです」

「 明日までになんとかしよう」 とAはあっさりいった。

私はAが何をやるのか早く見たかった。長い夜が明け空が白々と明るくなったのを

待ちかねて外に飛び出した。

私はおもわず腰を抜かしそうになった。

丘のむこうにあった山はスッパリと切り取られ、広大な台地が広がっている。

Aのやつ、思い切った事をやったな。

「 山はどこにいったんだ・・・・それにあの山の木は・・・」

「 材木にして一か所にまとめているよ。若いものに自分で家を建てさせるつもり

だったんだろう」

「 そっ、そうだ! だけどここまでやってくれるとは思わなかった」

「 それにね、トンネルもつくっておいた」

「 ゲゲッ! どこだ」 私はAが指さす方向を見た。

なにやらぼうっと光っている所がある。私は急いで台地まで駆け上がった。


トンネルだ! 台地の道の端にでかいトンネルが口を開いている。

私はトンネルの中に入って二度びっくりした。外壁はツルツルとしたガラス状だ。

さらに壁面に照明らしきものが無いのに明るい。外壁自体が光っているのだ。

「 ど、どこまで続いているんだ。まさか・・・」

「 そうだよ。どうせならと思って国道近くまでやっといた」

「 うーん! ありがたい。泣きそうだ」

「 よろこんでもらえて嬉しいよ」

「 Aさん、素敵!」 シズオはAに飛びついて離さない。浮気性なやつだ。

俺だってAが男じゃなきゃ飛びつくところだ。

「 村民だけが利用できる隧道さ。一般人には入口が分からないし、万一見つけても



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引き返してしまう仕組みだ」

「 なるほど、現代の遠野にするつもりか」

「 最初は一般社会との接点はできるだけ少なくするつもりだ」

「 フィリピンで若者を社会勉強に出すといったろう。ここで育った子供は学校やテレビ、ネット

で知識は得ても無菌状態だからえらい目に会うと思う」

「 若い者があちらに出かけるとしても受け入れ先が必要だな」

「 だから、そっちの方が水にあったらそこで暮らせばいいし、戻りたかったら帰ってくれば

いい」

「 ここの事をむこうで云ってもあの入口は見えないし、ここまで来るとすれば曲がりくねった

旧道だけだからな」

「 まあ、そんなことは先の話だ。肝心の連れてくる連中はどうするんだ」

政府へのテコ入れで経済は幾分好調になったとはいえ、恩恵を被っているのは一部の

富裕層だ。この国の若者は依然として将来に対する不安を持っている。

理想が後退し主体性や公共性の欠如した者も多い。

自分ではどうしていいか分からず宗教にのめり込む若者もいる。

そんな人間は根が真面目だから救いようがある。

「 わかったぞ! そんな連中を連れて来るんだな」

「 宗教にすがっても、何も解決しない事を薄々わかっている人を見つけるんだ」

「 生活保護や就職、結婚の世話を目的として形だけ入信している者もいるから、そんな

連中は除外するんだ」

「 適当な宗教団体がある。政界にも乗り出している」

「 誰を送り込むんだ、 ゼンさんか?」

「 彼を送り込んだら教祖にされちゃう」

「 一見、頼りなさそうな人間といえばあんたしかない」 はいはい仰せのとおりやりますよ。

「 一人じゃ不安だからシンさんを連れて行こう」

私は高価学会に入信した。入会の目的は特になく老後の不安などを仲間と語り合うときに

入信を勧められた事をはなした。

集会、修行、登山等を経験した。文化日は北朝鮮の祭りみたいで異常な感じだった。

集会の間にワタシが各人の脳を精査していった。驚いたことに幸せな人がいない事だった。

宗教に身を委ねたら幸せな気分になるはずだが。

物質的な悩み、対人関係の悩み、鬱などの自分の中の心理的な悩みはここでは解決できな

いようだ。

解決できないのは修行不足といわれ、4泊5日の合宿に参加を強要される。

さらに選挙のたびに動員要請される。つまり利用されているだけでは・・・

という不安があるが口にだせないのだ。

そんな人達の頭にワタシは忍びよりソッと語りかけた。

「 どうです。あなたの悩みを解決する方法があるのですが・・・」

「 ギャッ! 誰ですか・・・・」 腰を抜かしかけた相手に更に語りかける。

「 今のままでは貴方の抱えている問題は解決しません。それはあなたが一番分かっている

はずです。今すぐ脱会しなさい。はい一列に並んで!」

集会室はニ、三十人が整列していきなり脱会しますと云いだしたから大騒ぎだ。

あわてて制止するやつらをシンさんが吹っ飛ばしていく。その隙に私が誘導して

会館を抜け出した。チャーターしておいたバスに全員を収容して一路過疎村にむかった。

途中録画を流し私は具体的な説明を行った。

行先は過疎村ですでに宿泊施設は建設ずみだ。収入に不安のある人には口座に

数百万を振り込むし、学校もある。自然環境は満点で、家族で住むにも最高だ。

何よりあんたがたの不安のもとになっている将来性は保証する・・・とあることないことを

熱弁した。

「 あー疲れた。これじゃあワタシに洗脳してもらったほうが楽だ」

「 よく喋ったな、セールスマンになれるぞ」

「 集団誘拐みたいだったな」

「 まず自分たちの家を建ててもらおう」

「 見本のログハウスが建っているし、材木にはbェ打ってあるから図面を見てレゴブロック

のように組み立てていけばいい。内部はいくつかのパターンがあるから自分のすきなように

やればいいんだ。もちろん建築許可なんかうけないよ」

「 あとは集会所で年寄と一緒に今後の計画を立てていくし、「 家族のあるものは

こちらに呼び寄せたらいい」

「 それに、自給用の米や野菜を作る為の学習だな。とりあえず休耕田になっている

土地を借りて作ればいい。年寄が教えてくれるさ」

久しぶりに大勢の人がやってきたので、村中に活気が出たのが嬉しいらしい。

今年は祭りを復活させると意気込む年寄りもいる。

マイクロバスや軽トラも用意したので若い者が年寄の要望で町までの用事をこなすように

なりお互いの親近度も増したようである。

都会で生活していた人達を半強制的に連れてきたから、始めは勝手が違うようだった。

しかしここには自分たちで作り上げるという夢がある。

「 尻をを叩いたら最近まともになってきたよ」 村人が言った。

「 そうですか。彼らは経験が全然ありませんから気長に教えてやって下さい」 と村の年寄

に頼んだ。早くも住所を移したり、家族や子供を連れてきた者もいるので

村は一層にぎやかになってきた。人生は楽しむ為にあるのだ。

彼らがどこまで出来るか分からないが、必要な物資は元ホームレス軍団によって補給した。

私達は一旦東京に戻った。

元ホームレスは忙しい。伊豆の金塊管理から定期的にリゾート施設の様子もチェックして

いるのだ。そのうえ下町のマンションでは廃品回収までやっている。


三か月が経過した頃あの過疎村の若者から便りが届いた。一度見に来てほしいらしい。

私はAを連れて村まで出かけた。

もう既に稲は収穫期を迎えている。

「 やったじゃないかみんな。どうだい今の気持ちは?」

「 肉体労働はきつかったけど達成感はあります。今までにないいい気分です」

「 今考えると、あの宗教団体から抜け出せて本当に良かったです」

「 そうさ、ここでは生活を守る為に下らない競走や誰にもへつらう必要がないからな。

自分たちに気の向くままに仕事をすればいいんだ」

「 確かにそのとおりです。仲間と次の計画をねっています」

「 ところで何か他に問題があるんだろう?」

「 最近猿や猪、鹿がやってきて畑を荒らすんです」

「 あっ、それは気がつかなかった。 そしたらフェンスで囲うか・・・」

「 あのね、いいですか?」 とワタシが顔をだした。

「 この広い土地をフェンスで囲うのは大変だよ。だから犬を飼ってはどうかな?」

「 それだと相当の数の犬が必要だが、どこで調達するんだ?」

「 保健所にいくらでもいるだろう」

「 むむむ、そういえばあそこには捨てられて死ぬのを待っている犬がいるな」

「 あそこから黙っていただくんだ」

保健所を数か所回ったが、誰も誰何する者はいなかった。

死を予感していた犬はいずれも情けない顔をしていた。こんな人間の勝手な行動は

許せない。ワタシが犬たちに黙ってついてこいと思念を送った。

レンタルした配送トラックに犬たちを乗せ村に帰った。

病気や栄養不足で弱った犬を治療した後、身体を洗ってやると見違えるように

なった。ワタシが犬たちに教訓をたれている。

「 いいかお前たち、ここは町とちがって自由だが、争ってはいけない。お前たちには

仕事がある。この村にやってくる動物を追い払うのが仕事だ」

「 さあお前たちのテリトリーを巡回してくるんだ。ただしマーキングしちゃだめだぞ。

うんちもシッコも決められた場所でしろよ。それに獣が出てきた時以外はなるべく

吠えないようにな」

「 まあ難しい事はそれくらいだ。せいぜい村の人に甘えて可愛がってもらえ」

犬の群れは一斉に飛び出していった。

「 いまニュースで犬がいなくなったと騒いでますよ。中国人は犬を食べるから彼らが

関わっているのではと噂になっています」

「 たまには中国人に迷惑をかけるのもいいだろう」

「 ところで君たちはあの台地をどうするつもりだい」

「 それなんです。何か耕作物を育てようかと話し合っているのですが、素人なんで、

そこから話が進みません。ともかく畑作りは済んでいます」

「 お年寄はリンゴやナシ等の果物はどうかといってくれますが・・・」

「 それなら日本茶か紅茶はどうかな。Aに頼んで特別香りが高く味のいい品種を栽培

するんだ。日本茶って一回いれると香と味は素晴らしいが二回目は不味いだろう」

「 君らがよければ頼んでみるか・・・それじゃその前に茶の種を準備しよう」

私はAに遠まわしに言った。

「 A、君はお茶が好きかい?」

「 たとえばここにお茶の種があるがね、これをだね・・・」

「 みなまで言う必要はないよ。分かりやすい男だな君は。何を遠慮しているんだ。

この村の為だ、やるよ」

「 おーみんな! Aがやってくれるだとー 感謝しよう」

村人は苗床にAからわたされた種を蒔いた。これが成長するのが楽しみだった。

私は犬たちと村をあちこちまわった。台地の境界の斜面は雑木林が広がっている。

自分たちの役割を心得ていて普段は吠えないが、急に林のなかで立ち止まって逆毛を

立てて唸りだした。

鹿も猪もいない・・・何なんだろう? 

よく見ると林の隅に祠の様な物がある。ほとんど朽ち掛けているが何かを祀ったものか

もしれない。突然声が聞こえた。

「 そこなもの!」 私は驚いて辺りを視まわした。

「 お前じゃ、そこなもの! 見えないのかわしが」 不満そうな声だ。

「 今に見えてくるよ。弱っているんだ、今、力を貸している」

何かがぼんやりと姿を現わした。よく見ると現代離れしたぼろぼろの衣装を着た汚い爺さん

だった。

「 あんた誰?」

「 無礼者! 何という口をきくのだ。ただではすまさぬぞ」 

「 じゃあ、どなた様ですか?」

「 やはりの・・・ 嘆かわしい、わしを忘れてしまったのか・・・」

「 いえ、私は初対面ですが、どちらさん?」

「 われは山神だ。ここら一帯の山神として祀られていた」

「 それはそれは。つまり何かご不満があるのですね」

「 あたりまえであろう! 誰の許可を得て山を切り開きおったのじゃ」

「 そんな小さなことに拘っちゃいけませんよ」

「 なんと、小さい事というか・・・みなどうしてしまったのだ」

「 神様がそんなに怒っちゃいけません」

「 かってはわれをを祀り、崇められたのに、どうしてしまったのだ。われに説教までしおる」

「 ここら辺りは若い人が去り、過疎化してしまったのです。年寄だけが残ったので

生活で手いっぱいでした。そこら辺りに原因があるのでは」

「 おまえは信心はしないのか」

「 しません。あなたは人間が作り出した存在です。しかし今やここの人達は貴方を

必要としていないのです。昔はここの人達には頼る者が必要だったのでしょう」

「 そして貴方にその力があったならここは過疎化しなかったでしょう」

「 無礼者! われを侮るか! みておれ、われの力を!」 神様は両手を突き出し

呪文らしきものをとなえた。しかし何も起こらない。神様はへたり込んだ。私はすこし見捨て

られた山神さまが可哀想になった。

「 まあそんなに悲観しないで! 頼られようと考えるから失望するのです。どうです、

せっかく姿を現したのだから、現在のこの世の中を見物しませんか? それともこのまま

朽ち果てた祠に住みつづけますか?」

「 いやだー お前たちがわれをつくったのならば責任を持て」

「 だったら私についてきて下さい」 

しかしどうも不思議だ。存在しないものが現れるとは。ひょっとしたらAのせいかも

しれない。かって村人が祀り崇めた念のような残像に気付き、面白がって実像化した

のかもしれない。だったらとっちめてやるぞ。

「 A! お前だろう、ややこしい者を作りだしたのは!」

「 面白そうだから出してみたんだ」 

「 だったらあの山神さまの面倒をあんたがみてくれ」 Aは嫌そうな顔もしないで

山神さまに何やら言っている。すると苔の生えたような山神さまが洒落た容姿の中年

男性に変身していた。山神さまは、動きにくいだの文句を口では言ってるが、本心では

満足してるようだ。

私は元ホームレスのマンションにもどった。

私は山神さまを紹介した。みんな山神さまと聞いてポカンとしている。

「 つまりお主たちは浮浪者だったのか」

「 なんだとこのやろう! 浮浪者じゃねえ、ホームレスだ」 コウさんが怒鳴る。

「 まあまあ、何百年も経って現れたんだ。それを解かってやりなさい」

「 それなら古い事なら知っているって事かね?」 教祖が言った。

「 教祖、宝さがしを手伝わせる気か」

「 まったくな、教祖の病気は治らないなー」 コウさんたちがふざけて言う。

「 お前らは年寄の夢を奪うのか! 宝探しはわしの生きがいじゃ」

「 ふむ、それはよいな、われもその様なものがほしいものだ」

「 ゆっくり見つけるさ」 私は山神さまに言った。

「 山神さまなら山には詳しいんだろ」 教祖は未練たらしくいう。

「 そうよの、色々と山神同士?がりはあるが」

「 今、伊吹山のことを調べているのだが、年号が天正の頃大勢が山に入った事は

ないだろうか」      

「 はて、どうであろう。そのような話は他の山神からは聞いておらんがの」」

「 だめか・・・」 教祖はがっかりしたようだ。

「 おぬしの心中を窺うに、そのお宝を探す所業は卑しいものでは無さそうだ」

「 盗賊が隠した金の話は聞いたことがある。それで良ければ手助けをすべし」

「 おーそれでけっこう。金額は問題ではないんだ。見つけるまでが楽しいんだ」

「 江戸で盗み働きをして貯めた金を船で安房に運んでいた盗賊がおってな、欲を

かいてまい戻ったところを捕縛されたのじゃ」

「 名を日暮しの音蔵と云うての、隠し場所を白状せぬまま獄門にかけられおった」

「 安房といえば千葉県だな」

「 船から荷を降ろし、馬で運ぶのを土地の漁師が見ておって役人に届け出たが隠し

場所は判らずじまいだという事じゃ」

山神さまと教祖はうまが合ったのか仲良くやっている。

ゼンさんがアフリカに戻るというので送別会をすることにした。

例によって場所はキャバクラである。今日はチョウさんの馴染みの吉祥寺の店だ。

「 由利でーす」

「 さくらでーす」 

「 おお! これは美しい白拍子じゃ。苦しゅうない、もそっとこれへ」 どうやら

山神さまの地が出てきたようだ。

「 金はの、主に火成岩に含まれておっての、他には炭酸塩、硫化鉄にも・・・」

お得意分野でうんちくを披露する教祖。

「 おれに近づくとやけどをするぜ」 シンさんがハードボイルドを気取る。

「 いつもやけどを負っているのはおめーじゃないか」

「 なにおー この博打狂い!」

Aとゼンさんは相変わらずもてっぱなしだ。

「 ねえ、お仕事は何をしてらっしゃるの?」

「 この世界の観察だよ。ソマリアの海は素晴らしかったなー」

「 すてきー」 何がすてきーだ、手配りしたのはおれだぞ。

何故かあいつはもてるのだ。しょうがないからゼンに振ってみた。

「 おいゼンさん、澄ましてないで何かやれよ」

「 わかりました。それでは現地で習った民謡を歌います」

ゼンがしずかに歌う。すごい、心に沁みるような歌だ。

「 すてきー うるうるきちゃう」 

わあー、やぶ蛇だ! しかたないあいつらにゃかなわん。

「 いい機会だから、会計報告をしておきます」 会計士をやっていた   さんだ。

全て順調にいっていますが、金の供給が多すぎて、金価格が暴落しています。

そこところを今後考慮してほしいのですが。

あの鉱山の金は半無尽蔵で減ったようには見えないが、そんな問題があったのか。

「 山神さま。どこかの山か島に石油かガス田が大量に眠ってないのか?」

「 石油とは燃える水の事か? はて、どうであろう」

「 レアメタルでもいいよ」

「 何じゃそれは」

「 教祖、今度見本を彼に見せてやって下さい」

「 なんじゃ、この国にはレアメタルがないのか」 Aがつぶやく。

「 多くは輸入しています。それに精製するのにコストがかかります」

「 それに最近は代替え技術が進んで輸入量が減っている」

「 それじゃ見つける必要がないじゃないの」

「 ただジスプロシュウムなど一部は代替えができていません」

「 ということでレアメタルはあまり儲かりません。ただ政府に恩はうれますが」

「 恩をうったら何かいい事がありますか?」

「 私の希望としては、様々な障害を持って生まれた子供をなんとかしてあげたいの

です。せっかく生まれたのに一生ハンデを持って生活するのはかわいそうです」

「 ベトナムではその治療をしましたが、この国でもやりたいのです」

「 しかし日本では法律をたてに反対する者がいます。彼らから献金を受け取っている

政治家の圧力があるでしょう」

「 つまり政府の力で押さえるか黙認してもらうわけだな」

「 よし、石油は尖閣諸島近辺の海だな。Aに頼んでうまい方法を考えてもらおう」

「 石油と交換条件でそこら辺りを政府と交渉しよう」

元ホームレスのマンションを訪ねると教祖と山神さまは出かけていた。

例の日暮しの音造の隠し金を探しに行って以来梨のつぶてだそうだ。

「 すこし心配だな。大丈夫かな 最近教祖に付き合ってやらなかったからな」

「 そのうち得意そうな顔をして帰ってくるさ」

「 そうだな。しかし俺たちはいま忙しいし、今時宝探しなんかに同行出来ないからな」とコウさんが言う。

「 そうですか。まあ人生好きな事をやるのが一番ですよ」

「 ひとのゆく 裏に道あり 花の山」 と云うからなとワタシが呟く。

「 お宝を見つけたら寄付するんだからな。爺さんも役にたってるよ」




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第10章 難民がやってきた
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