それからどうするPart44

それからどうするPart45

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それからどうするPart48

それからどうするPart49

Part44-49
ホセは最近悩んでいた。Cとの約束で工場の連中が
何を企んでいるか、あるいは南沙諸島の基地崩壊
に何か関係してないか、何でもいいから探る事で
ある。その報酬は高額であり、それとは別に成果が
あがれば住居をくれるというおいしい契約であった。
そのため真面目に働くブラジル人を装って仕事を
しているが不審な点は見つからなかった。
唯一ホセが普通の人たちと違うと感じたのは社員寮で
寝起きする時に部屋にテントを張っていることだった。
その事を聞いてみると、何でもこの方が居心地がいい
のだそうだ。
メールで何度も別に不審なところは無いと報告を
Cにしていた。Cからはまじめにやれと怒りの返事が
返ってくるがどうしょうもない。
それにこの人たちは本当にいい人だと思う。
娘の登校にも力を貸してくれたしな。
この人たちを裏切る行為は止めたいのだ。ホセは
奥さんとも相談した。結局Cとの契約を打ち切る
方がいいということになったのだ。
ホセはCにこれ以上協力はできないとメールで
伝えたが、逆に家族がどうなってもいいのかと
恫喝されていた。ホセの元気がないのはそのせいだ。
そんなホセにイケが話しかけた。
「悩むことはないよ。私たちに任せなさい」
「本当?、どうやって?」
そうして中国の諜報機関がある日本本部の前に
Aとあの犬が現れた。
「ほーでかいビルだな。中国は金持ちなんだな」
「中にはうじゃうじゃいるぞ。どうするんだ」
ドンキと呼ばれる犬が鼻をきかせていう。
「このビルをグズグズにして崩壊させるんだ。私は
そんな事が大好きなんだ」
「そんな事をしたらみんな死んじゃうぞ」とイケが
心配する。
「迷惑を平気な顔でやるのは悪党だからいいんだ」
「まあ静かにゆっくりとやるからな」
Aとドンキが両手を上げると眩しい光が放たれた。
時間が止まったように誰も動きを止めている。
やがてビルは静かにペシャンコになった。
その間埃も騒音も出なかった。
そして何事もなかったように人の動きは再開した。
「さあ帰ってホセを安心させてやろう」
就任以来、大統領令を連発するトランプ氏の
過激発言は全世界で物議をかもしている。
この人気者のお陰で全世界が評論家になったようだ。
このところの彼の発言は経済面というより米国に
対する不当な利益とか金に関することばかりだ。
おそらく先の不正貯蓄を奪われた事が影響して
いるらしい。
中東諸国からの入国禁止措置は自分が投資して
いる国は除外されている。世の中は金だけで
動くものではないが彼の信条はそれが全てらしい。
ところで自分の金をこっそりと奪ったのは何処の
どいつであろうか。
毎日閣僚から世界情勢の動きについてブリーフィング
を受けているがそれについては何も知らせてこない。
小さなことだが日本にある中国の諜報機関のビルが
倒壊したというニュースが気になった。
「誰がやったんだ。 君たちか?」
「我々はそれに関与しておりません。大統領」
ハローワークの紹介で参りました。
顔色の悪い背の高い男がやってきた。
今時流行らない黒いマントを着ている男は東欧の
昔話に出てくるドラキュラに感じが似ている。
世の中、不況なのかこの小さな会社にも何人もの
人がやってくる。
「この会社に就職したいって?」
「そうです、やはり駄目ですか」断られると思ったらしい。
大きな体を萎ませた。
面接は社長のわたしそしてイケとAがやっている。
Aはこれが面接か・・と面白そうな顔をして彼をじっと
見ている。
「この人はなかなか面白い素性の人だな」とAが言う。
「お前たちより面白い人間だって・・あり得ん」
「あんたドラちゃんだろう。隠さなくていいんだ」
「はあ、私は日本に帰化したドラキュラの末裔です」
「でもやたらに血をちゅうちゅうやったら吸血鬼だらけ
になるよな」
「それが第三者の許可がないと空腹でも他人の血が
吸えない決まりがあるんです」
「それで止む無くレバーを食ったり、造血剤のお世話に
なっています」
「それに最近黒酢にんにくとかいうサプリを愛好する
人が増え迂闊に血をいただく事ができません」
「それでついに貧血でぶっ倒れ入院していました」
「やっと元気になりましたが、この顔色ですからなかなか
職にありつけないのです」
「それは大変ですな」 
「ところで血を吸う以外に何か特技はあるかね」
「そうですね、私は気配を消し家に忍び込む事が
できます」 
「成程、吸血鬼の特技だな」
「もう一つは占いというか不吉な予感がしたときは
必ず当たります」
「よし決まった。社員にしよう、課長待遇で」
「本当ですか」
「しかし試験がある。今から米国に行って血の気の
多い大統領の血を吸ってきてほしい」
「そんな事ですか、簡単です」といってコウモリの
ように飛んでいった。
「あけとくれ、開けとくれ!」
「おい、また変なのがきたぞ」
「誰かが引き寄せているんじゃないか?」
「社長、あんたか」
「まさか、お前たちの昔の仲間とちゃうのか」
「俺たちはあんなに酷くなかったぞ」
「ひょっとしたらAの奴じゃないのか」
「仕方ない、開けてやれよ」
「何か用ですか?」とドアを開けてやると、
「助かった、私のような者を中に入れてくれるとは」
「何者だい、あんた。それにしても特別汚いな」
「わし、いや私は貧乏神です。よく入れてくれました」
「お帰りください」と云ってもめげない神様は聞きも
しないのに必死で喋る。
「実は私は元は福の神だったんですが、この不景気
のせいでもといた家を一家離散させてしまい、責任上
居られなくなりました」
「ますます不吉なやつだな」 「あれは偶々の失敗です」
「以来、貧乏神として生きているわけだな」
「おっしゃる通りです。しかし私だってバブルを呼んだ
こともあるのです」
「環境さえ変われば福の神に変われるのです」
「それであんたの特技は何だね」
「強いていえば貧乏ゆすりで家をガタガタいわせる・・」
「迷惑なやつだな」
「他には・・あーそうだ」貧乏神は必死で考えている。
「不幸にする規模の大小を問いません。つまり国単位
でも貧乏にできます。嘘は言いません、この澄んだ目を
見てください」
「よし、決まった。社員にしてやろう」
「本当ですか?冗談なら祟りますよ」
「その代りに条件があるんだ。隣の国の横暴を知っている
だろう。例の慰安婦像や仏像の強奪、竹島占拠・・・」
「それにしつこいお詫び請求・・・あの恨国だができるかね?」
「出来ます、出来ます、簡単です」
貧乏神は俄然やる気になって飛んでいった。
村に火事が発生した。自警団のポンプ車のサイレンが
鳴り響いたので駆けつけると年寄たちも必死で消火
している。しかし萱で葺いた家はどんどん燃え広がっ
ていく。
「家の中に人が残っている」と泣き叫ぶが火の勢いが
強く誰も手出しが出来ないでいる。
最近出番が無かった私は燃え上がる家の中に入って
いった。「バリアを張れ」とゴエモンが叫ぶ。
中で震えていた婆さんを抱きかかえ家の外に避難した。
村民から礼を云われ私は悪い気がしない。
「いや、なに当然じゃよ」と余裕をみせつける。
工場に引き返した我々を自慢そうなホセが迎えた。
我々の留守に怪しげな男が入り込んだらしい。
馬鹿力のホセが殴って気絶させたようだ。
「ははん、あの火事は陽動作戦だったらしいな」
「じゃあこいつも例の国の諜報員か?」
「いや、こいつは寒い国から来たらしい」
「なら報復するのか?」
「今は中国とアメリカで手一杯だし、発電シートの製造も
忙しいからな」
「じゃあ警察に引き渡そう」
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