砂の器 2007/09/10

かって推理小説の虜になって乱読したころがあります。
その中でも最も印象深かったのが松本清張の砂の器です。
人間の理性とか、知性等という言葉が空虚なものに
思われる殺伐とした現代にも共通する人間の業の
ようなものが表現され、暗い冬の日本海が目にうかびます。

蝉しぐれ 2007/08/26

小説は睡眠薬の代わりによく読みます。
SFの難解で荒唐無稽さに比べると時代小説は
リラックスして読める良いところがあります。
特に藤沢周平の風景描写には感銘をうけます。
代表的な作品である蝉しぐれのラストシーンを
思い浮かべながら描いてみました。

異星の人 2008/05/11

SF小説の魅力は限りなく自由で、あらゆるパターンで
もっともらしい嘘が知性豊かな発想で描かれている事
でしょう。田中光二の「異星の人」は派手な展開もなく
荒唐無稽なスペースドラマでもありません。
物質文明を得た代わりに失った物の大切さを自覚できない
人類を査定する異星人が地球各所を旅するドラマです。
審判を待つ人間の方からみれば、(まったくのお節介じゃ)
ともいえますが、いつしかこのエイリアンの不思議な魅力に
とりつかれてしまいます。オーバーロードと人間の狭間に立って
苦悩するこのエイリアンを描いてみました。

旅のラゴス 2008/09/25

砂漠と渓谷の写真を見るうち、筒井康隆の「旅のラゴス」の情景を
なんとなく描きたくなった。この小説を読む度に「ソルベイグの歌」が
浮かんでくるのは何故だろう。世界を放浪し故郷にたどりついた
ペールギュントをやさしく迎える老いたソルベイグ。同じように
永い旅の終わりにラゴスはデーデ(氷の女王)のもとに帰ってゆく。
内容は幻想的な見聞録だが、ラゴスの場合は心の中の故郷への
帰郷という感じが強い。私がラゴスに憧れるのは逃避願望か
男のロマンか。以前、車で全国を旅したいと妻に同行をお伺いしたら
「一人で行けば!」と一発解答があり、以来車で仲良くスケッチ旅行の
夢は消えました。もう少し自活のスキル?を身につけなくては。

おじさんと犬 2010/12/21

河川敷を歩いて土手の斜面でタバコを燻らせながら
仲良く愛犬と座っているおじさんを見て思い出しました。
村上たかしのコミック雑誌、「星を守る犬」はちょっと泣かせます。
最近、犬で泣かせる手が多くてまたお涙ちょうだいかとさえ
思いましが、すっかりどつぼにはまってしまいました。
おじさんの転落人生はとても哀しいが、彼には愛犬がいてくれました。
飼い犬ハッピーと、「おとうさん」のふたり旅が始まります。
愛犬のまっすぐな愛を受け、彼の最期は美しく彩られ、ひたすら悲しく、
どこまでも温かいラストは涙をさそわれます。

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