第二章 最初の友人




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まだ8時過ぎか・・・、一時間近く歩き少し休憩する。体力の衰えは自覚しているが、

まだまだいけるではないか。ペットボトルのお茶を飲み、辺りを見回す。

河川敷にはスズメやひよどりが餌をついばみ、遠くの堰にはサギや川鵜の姿が

見える。「 あんたらも頑張ってるな―」 と、どうしても我が身の境遇に

引き比べてしまう。
そんなネガティブな思いを振り払い、きた道を引き返す。

最前の菜園の近くまで来たときだった。

「  おい!あんた」 小屋から飛び出してきた男に声をかけられた。突然の事で私は驚き

思わず後ずさりした。

声をかけてきた人物は如何にもあわてた様子で、どもりながら言った。

「  救急車を呼んで!救急車!」  私が何が起きたかわからず呆然としていると、

「  携帯持ってるだろ、携帯!」 男は怒鳴るように言った。

急病人か、そりゃ放っておけないと恐る恐る小屋の中を覗いた。

たしかに中で横たわった人が呻いているので、ここの番地を聞いて119番した。

行きがかり上、すぐに立ち去るわけもいかず救急車の到着まで待っていることにした。

不安気な男に事情を聞くと、隣人は酔って大声を上げることもあり放っておいたが

尋常でない声に変わったので、覗いて異変に気付いたそうだ。

助けを求めるべく顔を出したところ、朝っぱらから太平楽そうに歩く人物に

出くわしたらしい。

小屋の中はブルーシートの上にダンボールが敷かれ、薄汚れたマットレスもある。

酒瓶が転がり、ゴミとも生活用具とも判別できぬ物が狭まっ苦しく置かれている。

なるほど、これがホームレスの生活かと興味深く観察していると男が言った。

「  こんなもんだよ俺たちの暮らしは。真冬には駅にいるけどね。まあかつかつの暮らし

だけど、自由が一番だよ。あんたこの近くの人かい?」

この辺りを歩くのは初めてで、駅むこうのアパートにいることを告げた時、

救急車の来る音がした。担架に男が付き添うように車に乗ったのを見定め、

私は歩きだした。

住まい周辺の施設は住民票を移す時にPCで確認しておいたから、このあと図書館に

行くことにした。ふむ、下町にしてはかなり大きな施設である。

ロビーの掲示板を見るとカルチャー教室もやってるらしい。

ソフアーに座って新聞を読んだあと、図書カードを発行してもらい、小説を借りて

喫茶室に行きコーヒーを頼む。まあまあの味だ。軽食も提供してるらしいので、

チャーハンで早めの昼食をとった。

駅に通じる道のコンビニで夕食の弁当とお茶を買いブラブラと帰り道を歩く。

アパートの近くまで戻るとまだいた、あの婆さまが。

知らぬふりをして通り抜けようとしたら、やはり声がかかった。

手にぶら下げた袋と顔を交互に見ながら、

「 あんたタバコを吸うね」 とギロッと目をむく

「 気をつけてよ、寝たばこなんかしちゃだめだよ」

服についた臭いを嗅ぎ取ったか、思ったよりするどい婆様だ。

独り暮らしの内情まで聞き取り調査はしないのでホッとする。

さわらぬ婆に崇りなしとばかり早々に部屋に引きあげる。

出ていった時のままの部屋が私を迎えてくれた。

フローリングの上に直に灰皿を置いてタバコを吸う。

やはり安物のテーブルと棚くらいほしいなと思う。新聞にイオンとヨーカドウの

チラシが入ってたからそのうち行ってみるか。それより近所に銭湯はないのか。

アパートのバスは小さいし、せっかく下町に来たのだからら銭湯にも行きたい。

必要最低限の生活用品も揃い私の再生生活はまあまあ順調である。一人暮らしの

いい加減さで寝具はまだシュラフのままだがそれで不自由な思いはしない。

数日が過ぎ、銭湯が意外に近くにあることがわかった。

年寄があちこち歩き回るのだから徘徊君と思われるかもしれない。

なあに愛想さえ良ければ不審者とまで評価は落ちないだろう。

今日はウオーキングが終わったら銭湯に行こう。朝食を済ませ出発だ。

以前に比べ歩幅もスピードもアップしてどんどん軽快に歩く。

中継点から引き返す頃、遠くでゴロゴロと雷の鳴る音が聞こえた。

雨に濡れるのは嫌だな。それにこの河川敷はゴルフ場に近い広さだ。

心配だから河川敷から遊歩道に向かった。パラパラと雨が落ちてきたので

急いで傘を取り出す。突然頭の中が真っ白になり衝撃を感じたあと意識が途切れた。

気づいた時ぼんやりと見え始めたのは真青な空だった。

ここはどこだ、天国か?

「 神様有難うございます、やっと天国にこれました」

神様の御声が聞こえてきた。

「 何言ってんだ、俺だ、俺だよ!」

神様にしては品のないダミ声だ。揺さぶられて混乱していた頭がはっきりしてきた。

空のように見えたのはブルーシートの天井だった。

見知った顔が上から覗いて言った。

「 俺だよわかるか、あんたぶっ倒れていたんだよ。たぶん雷に打たれて」

「 あんたの携帯は壊れていて使い物にならないから、 それでここに運んできたんだ」

 「 気分はどうだい、足と手が黒く焦げてたようだが、大丈夫か」

歩行中に落雷に合うとはすごい確率だ。ついてるようでついてないとはこの事か。

すんなりあの世に行けたと思ったのに。

また面倒な世界に戻ったのに気が付いた。まあいいか大したことはないようだし。

身体は動く。ゆっくりと起き上がるが痛い所もない。手と足の先は黒くなって、

少ししびれが残っているが出血や、怪我のあとはみられない。

大丈夫と判断したか、男がコーヒーのカップを差し出してくれたので、

有り難くいただく。

インタントらしいが、再生後初めてのコーヒーのせいか美味く感じる。

「 ありがとう、助けてもらったんだな。もう大丈夫だ、自分でも驚きだが」

「 まあ無理しなさんな、ゆっくりしていくといいよ、こんな所だが」

「 ありがとう。わたし、ヤマウチ 山内賢といいます」

「 そうかい、俺はコウジ、ここらじゃコウと呼ばれているよ。そうだ後で仲間を

紹介しょうか。何となくあんたとは馬が合いそうだ。迷惑かい」

「 いゃーとんでもない、こちらに来てから友人はいなかったんだ、うれしいよ」

そんなことで、しばらくここで休憩することになった。俺としてはなんとかお礼が

したく、それを遠慮がちに持ち出してみると、快く受け入れてくれた。

「 それなら食い物と酒がいいな。よし、それじゃ今日はパァッとやるか。動けるなら

一緒に買い出しに行こう」

近くのスーパーで酒や肉などの食材を買い出しして戻る。

コミューンの住民が集まり屋外パーティが始まった。

まず助けてもらった礼と自己紹介、そしてこちらに来た経過を話した。

何故か熟年離婚の部分はうけてしまった。

教祖、コウ、チョウ、ヒロ、シン、ゼンの六人がこのコミューンのメンバーだそうだ。

白いひげをのばした知的な目をした男が教祖と呼ばれるまとめ役らしい。

彼の言葉は論理的というか哲学的な感じがあり、こんな人が何故といささか驚く。

この生活について尋ねると、人間は寿命を全うすることが唯一の任務だそうだ。

その他のことは、些細な事であり、常識やモラルとかに捉われず、其々がすきな生活をす

ることが望ましいのだと語る。

たしかに生まれて以来、常識や倫理を植込まれてきたし、仕事や結婚、子育て

更に社会との関わり等を人生から放棄することは考えられなかった。

「 その様な自分が好きな生き方をするなど考えてもみなかった」 と言うと、

「 何、そんなに難しく考えることはない、流されていけばいいんだ。しがらみを捨てれば、

捨てるほど自由が得られるんだよ」 確かにしがらみを私はひとつ捨てたのだが。

それに年金生活者のわたしには国への依存まで捨て去る勇気はない。

それでいて現在の境遇は何かが欠けていて心が満たされていない気持ちがあった。

教祖の話は自分の好みに合った生き方を模索するいい機会になるだろうか。

人生の目当ては無いよりあった方が生きやすかろうと思っていたが、どうだろう。

実生活で自由を得るとはどうゆう事か、いったい俺はどうしたいんだ。

「 正直に言えば模索しているのです。これからの生きがいを」

「 あんた真面目だね。常識で考えて当然と思われる事が、現実にはそのとおりで

ない場合、どこが間違っているか判断するには一度社会から縁を切るしかない」

「 失礼だけど、だからホームレスに?」

「 教祖、かっこつけるんじゃないよ。週に一度は背広に着替えて飲み屋を徘徊

してるじゃないか」 シンさんというもと自衛隊員が言った。

「 馬鹿者!それはわしの立ち位置として世情の変化を観察しているに過ぎない。

現状把握の一環じゃ」 笑いが沸き上がった。

私の拠り所としてきたのは国であり、社会の一員であることを心の奥底で自認するところ

にあったはずだ。

「 率直なところ国などは信頼に足らぬ存在じゃ。あのようなものに頼る奴の気がしれん」

 と教祖は言う。

私には試行錯誤の時間が必要だ。ここは私自身のフィードバック能力にかけてみよう。

しばらくは、この人たちと付き合ってみるかという、好奇心が湧いてきた。



--2--

賑やかな宴会も終り、家路をたどった。ふむ、これまではこんな事は考えても

みなかったなあとブツブツいいながらアパートまで戻ると声をかけられた。

「 なんだ、山内さんじゃない」 大家のバアさんだった。なんだと言われても

不思議に反発する気になれない。

「 うちのコロを見かけなかった? ごはん時には必ず帰ってくるんだけどねえ」

「 猫は徘徊するもんですよ。だからそのうち帰ってきますよ」

「 なんだ冷たいね」  あちゃ、まずかったかと思ったその時、一瞬だが公園の

植木の下に蹲る小さい猫の姿が見えたような気がした。

「 わたしが連れてきますよ」 と思わず言ってしまった。

バアさんは不思議そうな顔をした。




公園までずんずん歩いていき植栽の陰を腰をかがめて探すとやはりコロはいた。

抱き上げて連れ帰りバアさんに渡したら礼を言われた。

「 案外いい人じゃない」 どんな風に思われていたか想像はつくが、ゴニョゴニョと

返事をして部屋に戻った。

いやはや大変な日だったな今日は。お茶を入れて飲み、煙草を一服して一日を

回想した。何の因果かしれないがあの落雷は強烈だったなあ、よく助かったもんだ。

幸か不幸か生き延びてしまったと思うとホットため息が出た。

しかしさっきのは何だったんだろう。頭のなかにぼんやりとした窓のようなものが出現し

その中に一瞬公園の植木の下が見えた・・・様な気がしたのだ。その時は

これだと確信があった。だから猫を探しに行ったわけだが、そんな事が

あるんだな。ともかく不思議な経験である。惚けによる幻覚とは思えなかった。

思いを断つように、さあ風呂にでもいくかと気合をいれ、準備をしてアパートを出る。

アパートから道路までは踏み石になっている。そこを渡り、道路から横道に入る。

昭和の残滓がする建屋が残っていて、植栽の鉢が家の前に並んでいる。

替えの下着と石鹸やタオルを入れたザックを手にゆっくりと歩く。

風呂屋は十分ほど行った右側にある。

のれんをくぐり、サンダルを下駄箱に置き、中に入る。カウンターには女の従業員が

いて、プラスチックの腕輪が付いたキーをくれた。

脱衣所の鏡には来月から入浴料金を四五〇円から四八〇円に値上げすると

張り紙が貼ってある。石油料金の値上げにより止む無くとある。

庶民へのしわよせがここにもありか・・・とブツクサ言いながら、昔ながらのしゅろの

敷物を踏んで重いガラス戸を開け流しに入った。

シャワーで身体をさっと洗った後ゆっくりと湯船に浸かり背中を延ばす。

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タイル張りの浴槽に、正面は富士山の壁画という時が止まったようなレトロな

雰囲気が私にはうれしかった。

「 やあ」 と隣のジャグジーの湯船から声がかかった。

「 加藤さんもですか」 

「 俺だって銭湯にくるさ」 とアパートの隣人の加藤という中年の男が言った。 

人相はいまひとつだが気さくな人らしい。

「 あんた関西からだって?」 あのお喋べりばあさんだなとすぐに気付いた。

「 えーそうです」 

「 じゃあ関西は永かったんだ」

「 そう、でも育ったのは広島でね」 

「 じゃあ原爆にも遇ったのかい?」 極端に短絡的な発想だと思うが否定せず 

「 広島の人間というと皆それを聞くね。そうだよ、赤ん坊の時被爆したらしいけどね」


「 この間の地震と津波で原発の放射能が問題になったいるけど、大抵は大丈夫さ、

俺が生き証人だ」 

「 じゃあ前は何をやってたの、仕事は?」

「 しがないサラーリーマンだよ」

「 加藤さんは現役だよね。いいなあ若いってことは。仕事は?」 

「 マンションの管理人だよ。駅前にロワイヤルってあるだろう」 ここから加藤さんの

ぼやきが始まった。

「 でも楽そうに見えても結構気苦労が多いんだ管理人は」

「 マンションの住人は法律で管理組合に加入する必要があると聞いたけど」

「 うん、所有者はそうだけど、日常の管理は管理会社に委託しているんだ」

「 最近の住人の中にはマナーの欠けているのもいるから、住民同士のトラブルを管理人

に持ち込むし、やっかいな問題は管理会社からは出来るだけ管理組合に

下駄を預けるよう圧力がかかるんでね、板挟みさ」

「 だから掃除と門番やってりゃいーってもんじゃないんだ」

「 そうか、何でも仕事は大変だよね」

「 その点、山内さんはもうリタイヤしているようだし、気楽そうでいいね。人生を楽しんでい

る様な余裕があるよ」 

「 見た目はそうでも人生の楽しみ方がわかれば苦労はないよ。

博打も女道楽も無縁な石部金吉だから」

「 それじゃ毎日何してんの、暇だろう。今度マンションに寄って話し相手になってよ」

「 じゃ、お先に」 と加藤は脱衣所に向かった。

その時だった。加藤の置いた風呂桶がスーッと動いた気がした。

ウン? 湯船から溢れた湯に乗って動いたのだろうか。何だか気味悪いものを

見た気がした。今のは何だ! 私はおかしくなったのか。南無阿弥陀仏 アーメン。

私は当惑と共に怯えていた。今日は早く帰って寝てしまおう。

翌日は何もやる気が起こらずぐずぐすしていた。自分の気持ちを鼓舞して

ウインドブレーカーに着替えた頃だった。何となく誰かが来る予感がした。

大家の婆さんだった。オエッ、朝から縁起でもない。

家賃も自治会費も滞納してないし、ハテ? 

「 何でしょう?」 と問うと

「 いやだね、そんな顔をして、お裾分けだよ、タケノコを煮たんだよ」

なるほどこれが下町の付き合いというやつか。

「 すみません、有難うございます」

「 あんた独り者だろ、こんなもの最近食べたことがないと思ってさ」

何か魂胆があるのか部屋の中をしわ首を伸ばして覗こうとしている。

「 何だねぇ、上げておくれよ、今日はちょっと話があるんだよ」

「 あれ、綺麗にしてるじゃないの」 と部屋の中を観察している。

綺麗も何も大した家具は置いていないが、それでも値踏みするようにキョロキョロ見回して

いる。俺はどこかの工作員じゃないぞ。

店子としての契約も一応品定めらしきものはあったが、なんせ時代がかったアパート

だから家賃を払う基本的能力があれば、男、女、オカマを問わないという商業道徳で成り

立っているらしい。

ずかずか店子の部屋を観察するのは大家の特権と勘違いしているようだ。

「 あんた少し変わったね。生気が戻ったようだよ」

ん・・・すると前はキョンシーかゾンビかい。

「 ご用件は?」 と言う私の切り口上をものともせず、

「 あんた暇だろ」 ときた。どこかで聞いた言葉だ。

「 あのね、二丁目の薬局の須巳さんがね、いなくなったんだよ」

「 そりゃ大変ですね。おいくつなんですか、その人は」

「 私と同級生」 

「 そりゃ年代もの・・・」 と思わず口から出そうだった。

「 警察と自警団に探してもらってるけどまだ見つからないんだよ。あんた暇だろ

手伝ってよ」 大体の予測はついた。年寄の迷子だな。 

へいへい何度も言われずともお手伝いしますよ。長い物と大家には巻かれろだ。

「 これが須巳さんだよ須巳四郎」 と写真を見せる。家族写真の中で幸せそうに

笑っている年寄がいる。もう一度写真に目を移した時、フッと駅の名前がうかんだ。

浮かんだ情景に眼をこらすと宮ノ前とある。

「 あのう須巳さんは以前宮ノ前にいたことは?」

怪訝そうな顔をしたバアさんがハッと思いついたように言った。

「 四郎さんは宮ノ前で働いていたんだ、若い頃工場で!」

「 そうかひょっとしたら・・・」 いきなりバアさんは出ていった。後で聞くと警察に

連絡し宮の前駅付近を捜してもらったそうだ。

四郎さんは見つかった。元工場の前に突っ立っていたそうだ。

「 偶然ですよ、偶然」 後でやってきたバアさんと自分に言い訳するようにつぶやいた。

「 何なんだ、またかい、勘弁してよ」 と自分の思考の後をたどり答えの出所を

突き止めようと試みた。

しかしその努力は無駄だった。意識の深層から一瞬表面に通じた隘路は閉ざされた。

いつまでもその事にとらわれても仕方ないから、溜まった洗濯ものを持って駅前の

コインランドリーに放り込み、食堂で昼食をとった後、コンビニで夜用の幕の内弁当と

水を購入した。

駅の本屋で三冊ほど単行本を仕入れ、コインランドリーに戻った。

やじろべえの様に荷物を両手に持ち、ひょこひょこ歩いてアパートにたどりついた。

部屋には新聞紙とこれまで読んだ単行本が十冊くらい溜まっている。

粗大ゴミの日までにやっておく仕事がある。自炊作業だ。

「 自分じゃめしを作らないが、自炊するとはこれいかに・・・」 

独りごとが癖になったようだ。

何もないとはいえ部屋にはノートパソコン、プリンターそしてドキュメントスキャナー

があり、パソコンデスクに乗せている。

本をスキャナーでパソコンに取り込む作業を何故か自炊という。

私は本だけはよく読むほう

だから、読み終わったものは自炊してから粗大ゴミに出すようにしている。

これなら本棚がいらない。しかも暇つぶしになる。

裁断した本をスキャナーにセットすれば勝手にパソコンに取り込んでくれる。

その作業を見ながらまた思い出してしまった。まったく俺の脳はどうなっているのか、

スキャンして中を覗いて見たいもんだ。

その想いが通じたのか、私の意識の片隅ではっきりと捉えることができない何かが

差し招くように疼いた。何やら識意下の影がしきりに認知を求めて足掻いている

ようでもあった。しかしそれは再び消えていった。再び私の意識は疑問符で占められた。


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第3章 未知への足入れ
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