目次


第一章    熟年離婚

第二章    最初の友人

第三章    未知への足入れ

第四章    資金集め

第五章    埋蔵金探査

第六章    金山買取

第七章    謎の組織

第八章    詐欺集団

第九章   ...施設開業     

第十章    海外援助

第十一章   親不孝三兄妹 

第十二章   政権との交渉と外圧

第十三章   エピローグ



主な登場人物

私    ・・・・・・・・・・・ 定年後、熟年離婚で独り暮らしを始める

ワタシ ・・・・・・・・・・・ 私の中に突然現れて共生する存在

教祖 ・・・・・・・・・・・・ ホームレスのまとめ役

コウ  ・・・・・・・・・・・・ホームレスのメンバー、もと板前

チョウ ・・・・・・・・・・・ ホームレスのメンバー、もと会計士

ヒロ  ・・・・・・・・・・・・ホームレスのメンバー、もと建設業

ゼン  ・・・・・・・・・・・・ホームレスのメンバー、もと引きこもり

ロク  ・・・・・・・・・・・・ホームレスのメンバー、もと土建屋

シン  ・・・・・・・・・・・・ホームレスのメンバー、もと自衛隊員

シズオ ・・・・ ・・・・・・・新メンバー 中性的な男性

ジバ ・・・・・・・・・・・・・わたしによって改造された老人たち

大家 ・・・・・・・・・・・・ アパートの大家の婆さん

三兄妹 ・・・・・・・・・・ 親不孝三兄妹

伸夫  ・・・・・・・・・・・児童養護施設の少年




第一章  熟年離婚


いったい俺のどこが悪かったのか、いまだに判らぬまま妻の言いなりに離婚した。

まったくの奇襲に驚いたが、むこうにすれば明確な理由があったのだろう。

定年を迎えほっと気を抜いた時点での通告は敵ながら天晴れで、以前から練りに

練った行動だろう。最早引き返せないと判断したから訳は聞かなかった。

定年退職後は一緒に旅行などと考えていた自分が恥ずかしくもある。

子供はとっくに独立しているから、これからは自分の好きな様に生きればいいのだ。

しかし読書と、たまに描く水彩画くらいが趣味で、社交性はゼロ、無口な方という

人間を世間では面白味のない奴だと思うだろう。

仕事はつぶしの効かない職種であったから、無理して再就職もしなかった。

自宅は妻の希望であちらの物になったからいわゆる宿無しである。

離婚後早々に自分の家財道具を業者に処分を依頼して、取りあえずアパートに移り住み、

食って寝るだけの独り暮らしが始まった。

これまであくせき働き、定年になったらこれか・・・。考えまいと思いながら、こんな

目に合う為に働いてきたのではないという理不尽さと、おのれの阿保ぶりに腹が

たった。

心のダメージは当然あるが、全て自分のせいだと言いきかせた。

過ぎた事や歳月は取り戻すことはできないが、何かを始めるには遅すぎる事はない。

わたしは従来、単純でおっちょこちょい、先を予測して行動するのが苦手な直行慶行型の

人間である。

歩いてきた道を振り返ると、若い頃は仕事に夢中で家族を養うことに専念していた。

不器用な自分は自覚しているが、これならもっといい加減に生きていればよかったのか。

様々な思いが脳裏をかすめていくが、結局これもしつこく残る負のイメージを蓄積

していく愚かな行為だ。

これまで生活の基盤を脅かすような博打や恋愛沙汰にも手を出さず生きてきたのだ。

人生の晩年にこんなめに合うことが分かっていれば別の生き方をしただろう。

あーやめた! 阿保くさい、これ以上自分を傷つけてどうする。多くの人が手探りで生きて

、その時々で理由づけをして自らを慰めているんだ。

「 男やもめの暮らしも面白い・・・」 と無理やり気持ちを転じた。

若い頃、さだまさしにかぶれ、下町に何となく親しみを持っていたから昭和の香が残る東

京の下町のアパートに住み着いたという嘘のような単純さである。

安アパートだからか部屋が狭くて壁が薄く、隣のテレビの音や窓の開閉音までが

よく聞こえる。これには少し閉口したがいつの間にかそれらに慣れてしまった。

天気が良いのと風がないので部屋にいるだけで、汗ばむような陽気だ。

「 振り返ればそこには誰もいなくなりか・・・」 と自嘲する。

昨日もよく眠れなかった。三時過ぎに寝るのを諦めた。満たされぬ思いが私をひきずり、

目を閉じていても考えたくないことを思い浮かべてしまう。

窓の外が白々と明るくなったので起き上がった。

独り暮らしの一日は長い。牛乳とパンで朝食を済ませて日課に決めているウオーキング

に出かける。

角でアパートのオーナーの婆さんに合い、モゴモゴと挨拶を交わす。

如何にも口うるさそうな顔をしているが、まだ文句を言われた事はない。

昭和の匂いが残る下町の裏通りを通り、駅に向かって歩いていくと通勤の人や学生達が

増えてくる。せかせか歩く姿に若い頃の自分を思い出す。

「 諸君、適当に頑張りたまえ」 とぶつぶつ独り言を言いながら薄汚れたガード下を通り

ぬける。

ここから100mほど進めば公園で、さらに500m直進すると遊歩道があり、河川敷が広

がっている。季節は春、この辺りは比較的に雑草が刈り取られて歩きやすい。

その間から犬ふぐりや、仏の座などが小さな花を咲かせ楽しませてくれる。

菜の花の群生が中洲を埋め尽くし風に乗っていい香りを運んでくる。

機械的に足を動かすだけだが、ウオーキングする人、犬を運動させる人に出会ったり退

屈はしない。

しばらくすると菜園らしきものと苫屋の様な物が見えてきた。その向こうには

ブルーシートとテントがいくつかある。衣類がロープにぶら下がっているから

住人がいるかもしれない。少し遠慮して端の方を進む

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あらすじ

保守的で一向に変わらない:現世界と、世間の年寄に対する
理不尽さに半ば諦め、半ば反発を感じる人間の書いた
小説です。自分の欲求不満の解消を目的に書いておりますので、
中身はSF的で荒唐無稽です。ご了承ください。、

第2章 最初の友人
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