第八章   詐欺集団



私の携帯が鳴った。大家の婆さんからだ。アパートまで来てくれという。相変わらず遠慮を

しらない婆さんだ。でも先の組織暴力団の件では一応世話になったから手土産持参で

行くことにした。

「 まあすまないねー、こんな事してもらったら何も頼めないじゃない」 げげ! また猫探しか。

しょうがない、このあたりの偵察衛星としてバアさんは打ってつけだから大切に扱わんとな。

「 いえいえ、とんでもないです。今日は何か?」

「 すみえさんがね、詐欺に合ったんだよ。それでね、また騙されそうなんだよ」

「 その人は大家さんの友達かい」

「 そうだよ。小さい頃から友達さ。尋常小学校も一緒だったんだ。警察に云っても

頼りにならないし、それで山内さんに頼もうと思ってね」 警察も適正な評価を受けているな。

私はワタシにどんなものか尋ねてみた。

「 詳しいことはその人に聞くけど、まあやれるだろう」

婆さんの友達に会ってみると、品のいい人だった。こんな人を騙す奴は許せない。

事情を聞くと、フリコメ詐欺に一度会い二五〇万ほど騙し取られたそうだ。

その後、都から医療費を還付するむねの電話がかかり、その手続きの説明に人を

寄こすという。何となく怪しいと感じた

それでまた騙されると思い大家の婆さんに相談したらしい。

「 よく分かりました。わたしがこの方の中に入り相手をしましょう」 すみえさんになんとか

説明して分かってもらった。

私達は婆さんの家まで戻り、シンさんに来るよう連絡した。

「 ありがとう、ヤマちゃん」 頼んだのは俺だけど礼を云われるとは。

来た来たそれらしく都の職員になりすましたトッポイ野郎が。

何もしらず出されたお茶を平然と飲んでいる。

「 もう大丈夫だよ。こいつから辿って組織の全貌を掴んでやる」 とワタシがいう。

「 還付金はあなたの口座にふり込まれますが、それには所定の手続きがいります」

「 この書類に記入していただくだけです。還付を受けるというただの同意書になります」 

「 はいそれで結構です。確認いたしました。還付金は最寄りのATMでお受取りに

なられますのでこれからまいりましょう」 ここまでは詐欺師のペースだったが。

「 あなた、この間私の息子をかたって騙した人だね」

「 えっ、何のことでしょ・・・あれっ、ありゃ・・・そうです、いやあの時はどうも」

「 君はもう動けん。何も喋る必要はない。きみは下っ端だね。ふむ根津組か」

「 まったく、こんな善良な年寄をだますなんて。まともな仕事ができるだろうに」

根津組に乗り込んでから、シンさんの暴れっぷりはすごかった。湧き出てくるゴミを

片っ端からバキ、ボギ・・・と痛めつけ、その後にワタシが一人ずつ洗脳していく。

「 これは効率が悪い。全員を一度に済ます方法があれば簡単なんだが」

「 そのうち考えるよ。 それより、こいつらが悪道い稼ぎで貯めこんだ金を本来の持主に

返還させたい。そのデータが残っているかな」

「 取り敢えず、すみえさんに金を返して、あとはこいつら自身にやらそう」

全部片付いたとシンさんの声がした。こういう時、彼は手加減をしない。

この連中のシノギが詐欺だけではない事はわかっている。

悪徳金融業、海外子女の買春斡旋、麻薬類売買、プアービジネス等々さまざまな形態で

荒稼ぎをしてのける。まさに有害無益で世の中に必要性が皆無の存在だ。

芋ずる式に組が関連する下部組織を白状させ、まずシンさんに痛めつけてもらった。

「 こんな事ではやったことを許せないがね」 ぽんぽんとシンさんが手をはたいた。

全員が顎や手足を粉砕されている。

「 彼ら自身の手で出来るだけ返済させよう。それまでは恐怖に支配させるよ」

「 老人救済もいいが、こりゃ社会全体の手直しが必要だな」

「 残念ながら今の我々では力不足だよ。気長に一歩ずつ前進だ」

「 組織力か・・・存在を覚られず、メンバーを増やすのは難しいな」

「 やはり矛盾した仕組みを修整するには体制の協力が必要かも」

「 真面目に考えるほど頭が痛くなる問題が見えてくるな」 

「 すいすい事が進めばやりがいがなくなるよ」

「 今わたしは生まれた頃と比べてかなり感知能力が向上したと思っている。

どうも宇宙には我々以外に高度な能力を持つものが存在するようだ。

しきりにコンタクトしてくる様だが、わたしにはまだそれに応える力がないんだ」

「 へえー、お前ってすごいな。やはり私のワタシだ。で、もしそんなのに会ったら

気がコロッと変わって俺から出ていく気じゃないだろうな」

「 甘えん坊だな、いつまでたっても」

「 悪いか、どうせ俺は半人前だ」

大家のバアさんの信頼度が上がったのは私ではなく、シンさんだった。そりゃ私より

かなり若いし、よく見れば高倉健並みのしぶいいい男だ。

老人会の集会でシンさんの事が話題になり招待を受けたが、シンさんも女の年寄は

苦手だそうだ。

これでゼンさんやシズオを老人会に連れて行ったらどんな騒動になるか、

ちょっと見てみたい気がする。

元ホームレスのメンバーは現在は暇のようで、飲み食いには不自由しない身分になった

ものの何か物足らないらしい。教祖の指導が良かったのかぐうたらな生活は嫌らしい。

それで彼らのスキルをいかした廃品回収を趣味でやっているのだ。

ヒロさんは拾ってきた家具を手直しして自治会に寄付しているし、ロクさんは庭の手入れを

無料でやっている。

その他、週に3回、私たちは楽器演奏の練習をやっている。ワタシに頼んで音楽知識の

イロハから実際に各種の楽器演奏が出来るまでの能力を身に付けた。

不器用な私までかなりのテクニックで弦楽器が弾けるようになった。

介護施設を訪れる理由に楽器演奏が出来たらと考えたのだ。

「 あー若い時に憧れたんだ、こんなふうにギターを弾くのを」

「 もてただろうな、おしいなー」

「 これからじいさん、バアさんにもてるから我慢しろ」

「 むかしブラザーズフォアっていたろう」 俺はあのフォークソングが好きだったなあ」

「 CDそっくりの声で歌えるかな」 私はワタシにお伺いをたてた。

「 迷える年寄よ、それは可能だ」 ワタシは偉そうにいった。

各自が買ってきた好みのCDには廣澤寅蔵や三波春夫、石川さゆりまであった。

おやじが石川さゆりの声で歌ったらぞっとするからそれはボツになった。

成果確認のためマイクロバスでボランティアとして数か所の介護施設を巡った。

私達の演奏はかなり好評だった。それに教祖の三波春夫は迫真の演技で涙をだして

喜ぶお年寄りもいた。

「 他人に喜ばれるのがこんなに嬉しいとは思わなかった。便利だなぁお前って」

「 便利な電化製品みたいにいうな。感謝するか」 わたしが偉そうにいう。

「 する、する」

「 この施設にもいるな助けたい人が。施設の年寄には演奏を通じて侵入したから

少しずつ元気になるようにしておくよ」

伊豆の造成工事は順調に進み、ショベルカー、ダンプが土を削り、運び出し、そのあとに

タイヤローラー、ロードローラー、アスファルトフィニッシャー等が稼働して

丘陵地帯に緩やかなカーブで車が十分離合できる道幅の道路が完成した。

そこからブルドーザーが山を丘陵へと崩し始めている。

以前、金鉱から掘り出した金塊は大小合わせて50s弱だったが、販売ルート探しを兼ねて

三井住友鉱山の出張所に運んだ。分析してもらった結果はほぼ純金に近いことがわかっ。

買取価格は諸々の費用を差し引き1500万であったが、出所をしつこく聞かれ閉口した。

もちろん言えるわけがない。

ネット上で変な噂が立っている。介護施設を廻るある演奏グループの事だ。

演奏も玄人はだしだが、もっと驚くのは演奏を聴いた人たちの健康が改善される・・・

等という噂だ。このグループの身元は不明というので都市伝説扱いだ。

そのうち医師会あたりが嫉妬して医療法違反とかで問題にするかもしれない。

医師会から大口献金を受けている議員を通じて厚生労働省も縄張り意識をあらわにしてくる

可能性もある。

しかしそれと、金山発掘のグループとを結びつける事は今のところないだろう。



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第9章 施設開業
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