第七章  元ホームレス軍団の噂


教祖から話を聞いてくれと連絡があったのでAとボンを連れてマンションにむかった。

「 ケンさん何か面白いことはないのか、退屈だよ」 シンさんが言う。

「 あんたの退屈を紛らわすような出入は今ないよ。あの大家のバアさんに聞けば

一つや、二つあるだろうけど」

「 みんな今日はいるのかい」

「 いいものが出るということで廃品回収に行ってるよ」

高級住宅街の回収日なんだ。この間なんかパソコンのHDDとパスポートが結構な値段で

売れたしね」

「 そんなものが出るのか、無防備だな」

「 データを消してないHDDは個人情報目当ての業者が二万円くらいで、パスポートはその

筋の業者が二、三十万で買ってくれるんだ」

「 ブランド物のバックや服を平気で捨てる人もいるしね。世の中いろいろだよ」

「 それで得た金を施設や金で困っている人に還元するんだろう。大したもんだ」

「 俺たちゃ金がいらないしね、先の事を考えないから使い道がないんだ」

「 シンさんはまだ若いし、結婚とか考えたことはないの」

「 あの老人会ではさかんにそんな事を言われるけど、所帯を持つのが面倒なんだ」

「 そうか、惜しいな」

「 ははあ、あの沙良ちゃんのお母さんと俺をくっつけようとしたのか」

「 ばれたか、残念」

「 ヤマさん来たのか。待ってたんだ」 教祖が出てきて言った。

「 最近芳しくない噂がたってね。わしらは気にしないが、後ろに何かありそうなんだ。

元ホームレスがいかがわしい仕事をして町内の品位を落としているとかね」

「 この間駐在所のポリさんがやってきてね、また来るといっていたよ」

「 そりゃあいい、今度来たらそいつからたどって張本人を調べよう」

やってきたポリさんから噂をばらまいているのがマンションの住人と分かった。

「 週刊Aですが、今調査をしている事がありましてご協力をお願いしております」

「 あんた週刊誌の記者? 待ってたのよ!」 しめしめ引っ掛かったな・・・。

見るからに下世話なおばさんだ。町内やマンションの住人の行動の些細な部分を詳細に

見ている人間はいる。あの人は家賃を滞納してるらしいとか、あの人は出勤時間が

変わった。

だから仕事をくびになったんじゃ・・・とかプライバシーにかかわる話を平気でするのだ。

「 まあ人間の負の部分の一例だな」 おばさんの心に侵入しながらワタシが言った。

税務署を装った何者かがやって来て、このマンションに不法な仕事で得た高額所得者がいる

ので、ここでの暮らしぶりなどを調べているとおばさんに言ったらしい。

「 おばさんの性格を少し直しながら、その人間の身元を調べてみるよ」

税務署にはそんな人間がいないことが分かった。伊豆の施設に連絡をとると、やはり

変な奴が見学と称してうろついているらしい。以前中国の工作員が施設を襲った

経緯がある。あの時以来中国の中枢付近にもワタシの意識を浸透させた人間が

いるのだ。それによると今回は周到な作戦で同じことをやろうとしている事がわかった。

13億の人口を抱える中国はたしかに大国である。しかし経済の飛躍的発展は

誤った中華思想を増大させ、近隣諸国と無用の摩擦をおこしている。

前回失敗したのは自衛隊の能力を甘くみた為であり、要するに海上自衛隊を分散

させる陽動作戦を行い、そのすきに伊豆の金山を取り込むつもりらしい。。

なにせ何千兆円あるかいまだに判らない金鉱である。金欲の強い国だから我慢できない

のだ。武力で押せば強盗をやってもその行為が正当化できると思っているらしい。

私はホームレス軍団に徴集をかけ作戦を練った。

伊豆の施設付近の山はこれまでと比べものにならぬほど防衛能力を高めている。

万一の事を考慮し施設の住民は娯楽室に移動してもらう。

前回、中国は潜水艦と魚雷艇でコマンドを送り込んだが施設占拠に失敗した。その後、

Aの介入で強硬な施作を実施した為、地方で反乱が勃発した。

なんとか地方行政区の内乱は沈静化したが、落ち込んだ経済から国民の目をそらす為に

紛争をいとわない景気のいい話を吹聴するしかないと考えたらしい。

元々対馬も尖閣も沖縄もわが中国の領土である。

第二次大戦以来、小日本は敗戦国のくせに不当な占拠をつづけている。

いま中国は世界の大国となった。アジアはすべて大中国の支配下にあり、皆それを

望んでいるのだ・・・などと物騒な発言を繰り替えしている。

首相には前もってこのような事が起こると伝えておいた。

中国への海外資産はほとんど引き上げられていたが、残っていた民間人は密かに

引き上げさせた。今回はこちらで少しきつく叩くが手を出さないように依頼した。

対馬、尖閣、小笠原諸島にまず漁船が大挙してやってきた。次に漁船を守るという

勝手な名目で中国自慢の空母を中心とする艦隊を派遣してきた。

小日本何するものぞとやってきた艦隊を迎えたのは100万トンを越そうという

空母群と50万トンを越す超弩級の戦艦10隻だった。

いったい何処から現れたのか。小日本がそんなものを持っている話は聞いていない。

それが80ノットのスピードで駆け回り威嚇の砲撃を始めた。

いままで衛星に感知されなかったのは完全なステルスということか。

あまりのど迫力にびびった中国の艦船は蜘蛛の子を散らすように逃げ始めた。

逃げながらミサイルを放った敵艦船に100インチはあろうという大砲が火を

噴いた。10分経たないで中国艦隊は全て木端微塵に吹き飛んだ。

更に空母から飛び立った2000機の戦闘機と超でかい爆撃機が中国本土に向かった。

日本と台湾に向けたミサイル施設と空軍、海軍施設、及びシェルターは全て壊滅した。

攻撃は第二陣もあった。中央、地方を問わず全ての政治、軍事施設が崩壊した。

これで当分静かになるだろう。

わずかに残った報道施設からこれは小日本の暴挙だと弱弱しく非難したが逆に国際的に

これまでの行動が非難される始末だ。

日本政府はあずかり知らぬ事と言明するし、正体不明の艦隊すでには消えていた。

この大騒ぎの隙にコマンドが密かに伊豆に上陸していた。しかし彼らの行動は全て

お見通しで、迎える準備は出来上がっていた。

潜伏していた中国の工作員の協力で強力な火器も車で伊豆に運んでいた。

施設の丘まであと一息というところで何やらゴトゴトという音が後方からした。

現れたのは背の低い鉄の塊だつた。音もなく強力なビームがコマンドを襲った。

逃げまくり、隠れるコマンドの頭上に照明弾が打ち上げられた。

そこに小型のミサイルが撃ち込まれ生き残ったコマンドは降伏した。

施設では年寄が海軍旗を振ってバンザイをしている。

「 ワンさん、またやってきたのか。懲りない民族だなキミたちは」

「 ワタシ、ワンちがう。ワタシ悪くない!」

「 どうせ上から命令されただけというんだろ。だけど中国解放軍は壊滅したぞ」

「 ああ! あなた冗談上手!」

「 馬鹿輩!  そのうちわかるさ。当分くさい飯を食べるんだな」

あとで中国の様子をニュースで見せられてコマンド達はへたり込んだらしい。

一方的な海戦を見て首相は喜んだが、まだ不安のようだ。

「 あの艦隊と爆撃機はどこにいったのですか」 首相は欲しそうな顔で言った。

「 私にも分からないのです」

「 ほしいなー、あんなのが・・・」

「 まるで玩具を欲しがる子供のようですな。あんな武器を手に入れたらアメリカが

絶対文句を云いだすに決まっています」 

「 それでなくても日本の経済が絶好調なのを嫉妬しているはずですから」

艦隊を出現させると聞いたときは驚いたが、Aにすれば何でもないことらしい。

日本の利益だけの為ならAも協力しなかっただろう。

ともかくこれで東南アジアは静かになるだろう。知らないふりをしているが、日本以外に

あのような事ができる国は無いとどの国も思っている。

首相は澄ました顔で今後も世界秩序の為に貢献すると大きなことを言っている。

中国のミサイル攻撃の脅威が無くなった台湾はついに独立した。

世界の警察を自称する米国政府は沈黙を続けているが内心怒り狂っているだろう。

大国からの外圧に屈しないという日本の政府は戦後初めてだろう。

「 ところで人間は金に弱いんだな」 とAがいう。

「 たしかに金銭にこだわりがあります。人間は金銭の確保と貯蓄に短い人生を無駄に

使っています」

「日本は資本主義です。国民は自らの意志で金を稼ぐ事ができます」

「 国内には所得格差があります。おっしゃるとおり、分け合えば貧困率は低くなるでしょう。

それでうまくいけばいいのですが、人間はずるい一面があります。

わざと仕事をせず他人に頼るもの者さえいます。仕事をしない者が増えれば

資本主義の経済は低迷してしまいます」

「 他人より良い生活をする為に仕事をして金銭を稼ぎますが、その競争が技術の発展に

つながっているのです」

「 本来の生活の基本は、喰って、寝る為にあります。その条件を満たす為に仕事をし、

金を稼ぎます。食べるのも、寝るのも身体を動かすエネルギーを貯めるためです」

「 それは人間が生きるためだろう。そこのところは理解した。ところで君たちは

何のために生きているのか?存在意義は何なのか」

「 急に質問が難しくなりましたね。つきつめれば、おそらく子孫を残す、あるいは子孫繁栄

の為といったところでしょうか」

「 もちろん、そんな事を人間はいつも考えてはいませんよ」

「 でも本能で、争うし、奪い合う事も往々にしてあります」

「 それでは悪い方向に進むだけだろう。自分をコントロール出来ないんだな」

「 そうなんです。だから紛争が絶えないです。でも人間は複雑な平衡感覚を持っていてね、

いつも微妙なところで自分を取り戻すんです」

「 科学技術は発展しても、人間の中身はなかなかね」

「 よく破滅しなかったな」 Aは呆れたようだ。

「 たまたま生き残ったのかもしれません。私達もこの先自信はありませんよ」

「 面白い生き物だな。たしかに科学が進歩したり、繁殖しすぎて自滅した星は沢山あるんだ」



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A、海を見る
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