第三章  A大暴れ

次の日、教祖達のマンションを訪れた。

「 かってカントは何と言うたか! 人を手段として使うな。目的として扱えと・・・」

「 それは教祖のことだろう。俺達を道具に使ってるのは」

「 馬鹿者、お前らは何も理解しておらん。いいか良く聞け・・・」 やってる、やってる。

もとホームレス軍団のマンションに私達が顔を出すと、話を中断して言った。

「 ヤマさん、聞いてくれよ。教祖は俺たちの稼ぎを搾取するんだ」

「 相変わらず仲がいいですな。教祖、あまり無理をいってはいけませんよ。しかし

みんなは教祖に協力したいんでしょう」

「 まあそうだがね。ひと言いいたかったんだ」

私は彼らとAを紹介した。 教祖は埋蔵金の調査、あとのメンバーはリサイクル業を

やっていると仕事の紹介をすると、Aが言った。

「 地球の資源は有限だから、皆さんの仕事は重要です」

「 この人は日本人かい、なんか物言いが硬いね。それにめちゃいい男だ」 

「 またクラブに行こうよ。綺麗なねえちゃんと飲みたいな」

「 行きましょう。でもその前に協力してください」

「 出入ならまかしとけ。今度はどこだ」 シンさんが意気込んていう。

「 伸夫のいる児童養護施設の土地を立ち退き要求されているんです」

「 前の持主が善意で貸していた土地ですから正式な契約はしてないんです」

「 ですからはじめは穏やかに話をすすめます」

「 あなたたちにはモラルに訴えるビラ配りをやってください、これで何か引っかかってくる

でしょう」と用意したビラを渡した。

数日後、養護施設から園長がから急いで来てくれと連絡があった。

「 一時に最後の交渉をしたいと言っています。どうしましょう」 園長はオロオロしている。

「 いい値で買う契約をしてください。私の方から振込手続きをします」

「 いいんですか、そんな事をして?」

「 大丈夫です。ご心配なら立ち合いましょう」

私はAを連れて養護施設にむかった。はたしてチンビラを連れたぼんくら息子がやってきた。

「 困りますねこんなビラを撒かれては。これじゃまるで私が恐喝しているようじゃないですか」

 と開口一番、私達を睨んだ。

「 あれは私共じゃありません」

「 われ! 誰にものを言うとるんじゃ。舐めたらあかんど」 とチンピラが商売道具の

脅し文句をならべる。
ヒ、ヒ、ヒ、脅せば恐れ入るとでも思っているのだろう。

「 ところで今日は最終的な商談ということでしたが。私共は時価で土地を購入した

いのです。弁護士に調査をしてもらつたところ時価は8000万弱だそうです」 

「 何ぬかしとるねん。これまで地代を貰っとらんじゃろーが。その分上乗せじゃ」

「 ところで貴方はどなたですか」

「 わしゃ神道組の中井じゃ。このボンの後見人じゃい。ごちゃごちゃ言わんと二億出せ。

それで我慢したる」 チンピラは凄んで言った。

「 2億でいいんですか分かりました。で、契約書はそちらで用意いただくとして、どちらにお持ちすれば

いいんでしょう」

「 なんじゃ・・・それでいいんか。あとで泣き落としはきかんど !」

こうして神道組にタブレット持参で訪れると組長以下人相の悪い連中に囲まれた。

「 私が施設の後援者です。早速契約を済ましたいので、こちらの振込先の銀行口座番号を

教えて下さい。それと契約書類も出してください」 とタブレットをだした。

「 そちらのパソコンかスマートフォンであなたの口座に振り込まれたのを確認していただ

ければそれで終了となります」 組長以下ポカンとしている。

ワタシが組の口座情報を読み取ったと知らせてきたので、

「それでは振込ます」 と言ってシンさんに合図した。彼は座った姿勢から飛び上がり

後ろを囲んでいたチンピラをバキ、ボキと片付けていく。 自分らが痛めつけられることなど

想定していなかった連中は罵声をあげるばかりでおたおたしている。

私はAに暴れていいとサインをだした。Aはグワー!と叫び重いテーブルや家具を持ち上げ

叩き潰したりすごい勢いで放り投げている。部屋の壁は大穴が開き柱が折れ部屋は

壊滅的な状態でビル全体が不気味に揺れている。

「 急いで引き上げだ!」 と号令をかけ、私達が組から逃げ出した時、ビルが凄い音と

ともに崩壊した。

「 ひゃー危なかった。A、やりすぎだぞ」

「 悪かった。面白いからつい調子に乗ってしまった」 Aは壊れたスピーカーのように

ファーファーファーと笑った。お前はバルタン星人か。

「 そういう時の笑いは ハ、ハ、ハだ。そしてもっとボリュームを落して!」 

「 気持がいい。スカッとしたよ。いい体験だ ハ、ハ、ハ」 ちょっと違うがまあいーか。

「 馬鹿力だな、まったく。ともかくここからふけよう」 シンさんもあきれている。 

「 あとで組の口座を空にしておきます。それからあの阿保地主を脅して正式に土地を

買い取ります。今日はご苦労様」 とシンさんをねぎらった。

「 君たちはいつもこんな面白いゲームを楽しんでいるんだな、うらやましい」

「 いつもとは言い過ぎだ。止む得ずやってるんだ」 とシンさんが言訳する。

その日のうちに地主から半額に近い価格で土地を買い取り,、園長を安心させた。

マンションではシンさんが報告をしている。

「 おれが大暴れしてヤクザは壊滅したんだ」

「 そんなことを聞いてるんじゃない。施設はどうなったんだ」

「 あーそれか、あの土地は施設のものになったよ」

「 それでAはどうした」

「 あいつはとんでもないやつだ。ゲームと勘違いしてるんじゃないか」

「 あれなら女の子が放っておかないよ。多少ボウッとして頼りないところがもてるんだ」

 とチョウさんが一人前のジゴロのようなことを言う。

「 バーカ、お前がもてたことがあるのか」

「 あれが宇宙人ねえ。 何も知らないんだって?」 

「 俺達がホームレスから出世したこと教えてやれば感心するぜ」

「 あーあ、またクラブに行きたいなー。教祖なんとかしろ」

「 今度、Aを案内するという事で、わしらがついて行くことにするか」

その夜私達は歌舞伎町に繰り出した。

「 キャバクラいかがですかー」 いるいる客引きが。

「 60分飲み放題、4000円でいけるよー」 と声をかけてくるが軽くいなして歩いていく。

教祖の馴染みのクラブはなかなか高級感のある雰囲気だ。

「 教祖、隅におけんな、綺麗な姉ちゃんばかりじゃないか」チョウさんが興奮したように言う。

「 まーキーさんいらっしゃい」 ママに腕をとられ教祖がヤニさがる。

「 キーさんだってよ」

「 カオルです、よろしくー」

「 ミクです、よろしくー」

「 わあーいいなー、どっちも」

「 ずっと悩んでいろ、ばか」

女の子はAを見てキャーキャー騒いでいる。男振りからして止むえんか。

「 まー冷たい腕をしてらっしゃるのね」 Aの腕を取ってる娘が言う。

私はふざけてAに目配せした。

他の子が腕に触ると熱!といって手を離す。

「 彼は体温をコントロールできるんだ」 

「 ちょっと受けようと思ってやったんだ」 Aが嬉しそうに言う。

「 キャーすてき」 何がすてきーだ。Aのやつ抜け駆けしたな!とコウさんが怒る。

「 まあまあ、それだけAも人間に近づいたんだ」 教祖がそっとフォローする。

「 まあいいや、おれは綺麗なねーちゃんと飲めれば文句ない」 とロクさんが言う。

「 ゼンを連れてきたらえらい事になったろうな。俺たちゃみんな引き立て役だ」

「 あいつは真面目だからな。ジバと一緒がいいらしい」

私はゼンから報告を受けていた。海外援助の核となって活躍しているようだ。

いつのまにか町内のアパートに滅法いい男がいるという噂がたった。

アパートの周りをウロウロする婆さんもいるという。

コンビニ強盗やチンピラが減ったのはAのせいだと噂を流しているのは大家の婆さんだ。

いまだに遠山の金さんや、暴れん坊将軍が話題にあがる年代だからヒーローには弱いのだ。

さしたる用事もないのに近寄ってくる。

Aも最近ではかなりコミニュケーション能力が上達した。下手な冗談やお世辞も

言えるようになった。

「 こんにちは、いいお天気ですね」 Aが如才なく挨拶をする。

「 あんた、独り者だろ、結婚はしないのかい?」

「 あんた、いくつだい、いつまでも一人じゃいけないよ」

「 一応27歳という設定になっています」

「 なんだいそれは?」

「 大器晩婚なんです」 これは多少受けたらしい。



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第4章 外圧高まる
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