第十五章  ロボット研修生



ロボットが研修を受けている。Aの汎用型として作られたものだ。

もちろん外見はAと同様ヒューマノイド型であり、女性の扮装をしている。

「 コーチする人たちは選んであります」

「 君たちの頭脳には知識が詰まっているが、ここでは微妙な応用力を学ぶんだ」

「 このマンションの人はいろんな人格を持っている。彼らが言っている事が正しいとは

限らない。むしろ世間的にはズレているから勉強になるよ」

「 答えはひとつではない時が往々にしてある。疑問はその都度質問したまえ」

「 君たちには今は個性というものが無いから少しずつ形成していくんだ」

「 ではまず教祖を紹介しよう」

「 おお君たちはロボットか? いい女じゃな」

「 教祖、俺にも紹介しろ。えーっとコウですよろしく」

「 ケンでーす。何でも聞いてちょう」

「 チョウでーす。会計関係はうるさいんだ」

「 シンでーす。暴力団のしのぎなら僕に聞いて」

「 誰が僕だ! いーかお前ら下手におさわりなんかするとバラバラにされるぞ」

無表情に黙っていたロボットの一人がニッと笑った。ちょっと怖い感じだ。

「 やはり最初はシズオに頼もう」

「 どいてくださる。女には女よ」 シズオが進みでた。

「 みなさーん、シズオよ、よろしくー」

「 あのね、人間は男女、小さな子から年寄、健康な者から病人まで、性格のいいのから

悪い者まで、自分の信念を持っている者、ちゃらんぽらんな者こういった分類は出来ている

かしら」

「 人間には直感という便利な物があってね、理屈ぬきに対応できるのよ」

「 貴女たちには経験とデータの蓄積により応用力を付けるしかないの」

「 でもね、一旦それをマスターすれば、計算力も語学も反射運動力も人間はかなわない

んだから自信をもちなさい」

シズオによって対応力のトレーニングが行われ、いよいよ実地訓練を行う事になった。

「 ここから一人ずつ歩いて公園を一周して帰ってきてください」

ちゃらい男が次々と声をかけてくる。しつこくまとわりつく男を押し返すと5メートルほど

ぶっ飛んでいった。平気な顔で戻ってきたロボットにシズオが注意している。

「 人と付き合おうと思ったらやりすぎちゃだめよ。相手は生身よ、ナンパなんかうるさい蠅と

思って手加減しなさい」

「 はい、わかりました先生」 ロボットのねえちゃんは素直にうなずく。

「 人間の男は時に理性が本能に負けて、とんでもない事をやろうとするものよ。

特にあんたたちみたいに魅力的な容姿をした女性を見るとね」

「 チンピラのように悪意のある場合は手足を破損させてもいいわ」

「 じゃあ実体験のために歌舞伎町か六本木に行きましょう」

歌舞伎町で美女7人が歩いていると、それらしいのが卑猥な言葉を投げて来た。

「 いいわよ」 とシズオが声をかけると、待ってましたとばかりチンピラを畳んでしまった。

どうも彼女らにはAの悪戯好きの意識が残っているみたいだ。

見ていた通行人は最近の女子プロレスはあんな綺麗なのがいるのか?それにしても

メチャ強えーなと感心している。

彼女らは社会に溶け込みあらゆる階層に接触し、個人や一族の財産をチェックする使命を

もっている。ワタシの力では届かない部分をカバーする為に生まれた。

さらにあらゆる方法で海外に蓄財している日本在住者から不当な財産を収奪する役目を

担うのだ。

彼女たちは研修を終えれば実社会に紛れ込む。会社員、水商売、役人・・・かもしれない。

その数は今後増えていくだろう。

それは富の平均化が目的なのだ。大体土地の所有者という概念がおかしいのだ。

そもそもあの土地、あの山は国の物でありその国に住んでいる者全員のものである。

首相には口を酸っぱくして、固定資産税と相続税を上げろと云っている。

そのような法案を政府が閣議に持ち込めば、すぐに反対勢力により失脚すると言うが、

なに心配はいらない。すでに議員すべてが意志に逆らっててでも否応なく

賛成にまわるのだ。その法案が成立しても国民、特に富裕層が絶対反対する・・・

と心配する首相に対して

「 あのね、全の富裕層にも、ある意識が浸透しているから心配ないよ。そしてそれらは

国の財産になるんだ」 と伝えた。

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第16章 エピローグ
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